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山中の異人

山中の異人 仙臺封内風土記
 奈良に都があったころ、定恵という僧が山岳修行に勤しんでいた。
 ある時、寺を造るべき山の中で探していたところ、峰と谷がそれぞれ九十九ある山にたどり着いた。
 ここで寺を造ろうと思ったが、先住している異人があってそれを許さなかった。

 名を大菅谷、佐賀野という夫婦で、共に紅顔美麗にして老いず、数百年の昔の事をはなしたという。
                                                                                                                                                 
 しかし、定恵は錫杖の影一本分の土地だけでもと異人に願った。
 異人はそれくらいならと応じた。
 すると、不思議な事に強い光があたり、あたりいったいは影の下になった。
 そうして建てられたのが、洞雲寺であるという。

 大菅谷、佐賀野は約束を守り、山の遙か西、根白石の山間に去った。この地を堂所といい、いまも希に異人の姿を見るという。

 
 


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