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最後の一口の魔法。

飲み会の席で、唐揚げが一つ残る。
均等に割ったら、余りが出ない時でも。
誰かが一個分損をしている。なのに、
必ずと言っていいほど、一つ残る。

ここで、最後の一つは象徴論を唱えたい。
つまり、あの唐揚げは食べ物ではなく、
象徴になったのだ。
何も載せていない皿は、無情にも回収される。
それを防ぐ、最後の砦として象徴になった。
食べ物から、象徴へ。価値が変化する。

つまり、僕が何を言いたいかって言うと
「最後」という言葉には、魔法がある。
...のではないだろうか。

最後のシーン。
最後の電車。
最後の戦い。
最後の恋。
「最後」は特別になって。
思いもよらぬスピードで駆け抜けていく。

そして、平成最後の夏なんだってさ。
感慨深くなんて無いな。
夏休みはいつも早く終わってほしかったし、
最近はただ暑いだけだ。

「平成最後の夏だから、ね?」
って、どうせ高田馬場で酔った大学生が
上京したての女子大生を家に誘うんだ。
やってらんないね。

ニュースが報道したのは
「平成最悪の災害。」だった。
おいおい、意外と30年で悪いことは
他にもあるもんだぜ?思い出せよ。
今を大事にはしてほしいけど
今までを過去にするなよ。
現在進行系だろ?なぁ?

最後、最後、最後。
なんて言葉を付けて
僕らの夏を最後の一口分
とって置くつもりはないだろうか?
食い切れよ、遠慮すんなよ。

夏は、また来年やってくるぜ。

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