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視点提供録 vol.802:完璧主義は悪いこと?最善主義が良いこと?

「完璧主義」と「最善主義」という言葉あります。言葉がありますと書いておりますが、辞書には載っていない言葉のようです。「主義」を除いた意味を辞書で引いてみると、
・完璧・・・欠点がまったくないこと。
・最善・・・いちばんよいこと。いちばん適切なこと。できるかぎりのこと。
と載っています。

一般的に、「完璧主義は悪い。最善主義は良い」と言われているように思います。果たしてそうでしょうか。そうとは限らないと思います。たとえば、仕事でお客様から依頼を受けたとします。わかりやすく1ヶ月で社内システムの製作の依頼を受けたとします。このとき、完璧主義の考え方に基づくと、1ヶ月以内に製作を終えると思います。一方、最善主義の考え方に基づくと、「最善を尽くしたが間に合わなかった」という理屈が成り立つと思います。この2つの考え方があるとき、今後の展開としてどのような展開が考えられるでしょうか。完璧主義に基づいたとき、会社の信用を得ることができ、今後の継続発注があるかもしれません。一方、最善主義に基づいたとき、会社の信用は失われ、今後の継続発注はない可能性が高いと予想されます。こう考えてみると、「完璧主義は悪い」とはあながち言えないようにも思うのです。

また、仕事別に考えてみたいと思います。たとえば、ふぐ料理のお店を考えてみます。ふぐにはテトロドトキシンという毒があります。この毒を取除いて料理が出されます。この毒を取除く作業において「最善主義」は通用するでしょうか。「最善を尽くしたが毒が残っており命を奪うことになってしまいました」でお店が継続できるでしょうか。おそらく、できないと思います。完璧主義が必要な仕事と言えるでしょう。一方、プロ野球選手の打率を考えてみます。一般的に、打率3割ですごいと言われています。打率10割の完璧なバッターが理想ではありますが、現実的に非常に難しいものと言えます。つまり、完璧主義は求められていないと言えることでしょう。方や完璧主義を求められ、方や完璧主義は求められない。やはり、完璧主義は必要なところには必要なのだと思います。

さて、ここで「最善」の辞書の意味を振返ってみようと思います。
・最善・・・いちばんよいこと。いちばん適切なこと。できるかぎりのこと。
です。今回注目したいのが、2番目の「いちばん適切なこと」という意味。これを踏まえると、完璧主義を2つに分けて考えられるように思います。それが、「(自分にとっての)完璧主義」と「(相手にとっての)完璧主義」です。具体的に上記のシステム製作を例に挙げて考えてみます。前者は「自分もお客様も満足する完璧主義」、後者は「お客様が満足する完璧主義」と考えられると思います。こう考えてみると、「いちばん適切なこと」はお客様が満足することであり、最善主義は後者の完璧主義と同義と考えられなくはないでしょうか。「誰にとっての完璧主義か?」で完璧主義の意味が変わってくると思います。

ここまでみてくると、「完璧主義」は一概に悪いとは言えないように思います。たしかに、自分にとっての「完璧主義」は苦しく辛い考え方になるかもしれません。しかしながら、相手にとっての「完璧主義」は「相手の満足を満たす」という最善主義の「いちばん適切なこと」を満たすことになり、必要な考え方と言えるかもしれません。「完璧主義」も「最善主義」もどちらも大切なのかもしれません。