【インタビュー】「通学路に一軒の本屋」が理想ー親子絵本専門店NanuKさんが作るローカルなシェア本屋への出発ー

あなたは13歳になったとき何をしていましたか?

どんなふうに生きて、自分はどんな存在だと思っていましたか?

13歳になったとき「魔女の宅急便」の主人公キキは生まれ育った場所を離れて、自分だけの力で生きていくために新しく住む場所を探し始めました。

それが魔女として生きる掟だからです。

13歳だったときのわたしはこれを読んだら「楽しそう!」ときっとわくわくしていたと思います。

いま、27歳のわたしはあのときよりも少しだけ成長して世の中そんなに優しくないぞと知ってしまったので「え、大丈夫かな」と臆病になる気がしています。

だけど、例えばわたしが子供を産んで、その子が13歳で自分の知らない場所で暮らす、となったときわたしはなんて言うんだろう。

同じ本でも年を重ねるにつれて受け取り方に大きく変化が生まれてくることがあります。

だからこそ、

「親子で読むと読書はもっと楽しくなると思うんです」

そう話してくれたのは「親子絵本専門店NanuK」を営む絵ノ本桃子さん。

3児の母として、本屋の店主として、たっぷりお話しを伺いました。

***

出版取次としてのはじまり

ーーー絵ノ本さんは最初から「親子絵本専門店」を開こうと考えていたんですか?

元々、最初は出版取次で働いていました。

出版取次というのは、出版社と本屋さんのあいだに立つものだから、どちらの仕事も見ることが出来ていいな、と思ったんです。

それで、新卒で出版取次の会社に就職したんですが、本の世界で働くのであれば、さまざまなジャンルの本も読んだほうがいいんじゃないかなと思いました。

なので、それまでは児童書ばっかり読んでいたんですが、いったんやめて、ビジネス書や村上春樹や恋愛小説も読んでみることにしたんです。

そうやっていろいろものを読んでいくうちに、やっぱり児童書が一番好きだなあと再確認しました。

SFや恋愛小説も楽しいけれど、そういうものって児童書に要素として全部詰まっている気がしませんか。

ーーーとてもわかります。

いろいろなものを読んだからこそ、自分が好きだと思うものがわかったので改めて「児童書」を仕事にしようと思ったんです。

でも実際に「児童書」を仕事にしようと思ったときに、自分にはキャリアもないし、20代は児童書からも離れていたので悩みました。

ーーーどの角度から関わっていこうかということでしょうか。

はい、そのとき私は出版取次の会社は退職して、ライターとして5年以上経験していたときでした。

ライターの仕事というのは「こうしてください」って言われたものに対して応えていくものだと思うんですね。

そんな風に受け身だったライターの仕事から、そろそろ卒業するときなのかもしれない、と思っていたこともあり、自分でメディアを立ち上げようかなと思いつきました。

Webメディア兼本屋というあたらしいかたちへの挑戦

ーーー絵ノ本さんはWebメディアだけでなく「本屋」さんとしても運営されていますよね。それはどうしてなんですか?

ただ絵本を紹介するだけならブログで充分だし、趣味でやっている人はたくさんいるので、私がやる意味はないと思います。
 
私は、メディアを通して「本を買ってもらえる仕組み」を作りたいと思ったんです。
 
出版取次の仕事をしているときに、もう、本屋さんがどんどん潰れていくのを目の当たりにしていたんですよ。

ーーー確かに、最近はニュースでもよく見かけますね。

それがとても悲しくて、その原因を探りたくて、でもここにいても答えは見つからない、そう思って出版取次を辞めました。
 
だから、ライター以外にも図書館で働いたり、電子書籍の仕事もしていました。

ーーー幅広く出版という仕事に携わってみたんですね。
 
出版に携わるいろいろ業界を見たんですが、なかなか「これ!」という答えは出ませんでした。
 
考えてみれば当たり前でした。

本屋さんになったことがない私に、当事者の気持ちなんかわかるわけがないんです。
 
だから「本屋になって本屋の立場から探していこう」と飛び込むことにしました。

私のこれまでのスキル、図書館や出版取次と、ライターという経験を最大限に生かせるもの、それがWebメディア兼本屋、という形でした。

「親子」だからこその楽しみ方を提案したい

ーーー「絵本屋」ではなくて「親子絵本」とついていることは、何かこだわりがあるんですか?

絵本が選ぼうとしたときに、ただ絵がかわいいとか人気だからとかいう理由よりも、作家さんがどういう思いで作られたか、というのを知るほうが、本に対する興味が生まれると思うんですよね。

この絵本はどんなふうに作られたのか、とか、モデルがいる、とか…絵本が作られた背景をストーリーとして紹介することで、よりその絵本を身近に感じると思うんです。

ーーーたしかに、作り手の思いって読者にはなかなか見えづらい部分でもあるかもしれません。

作家さんのインタビューなんかものせて、作家さんと読者のあいだに立てるようになりたいなと思っています。

選ぶときに、ネットの口コミとか本屋さんにある紹介文だけじゃないお客さんなりの判断理由が出来たらいいなと思うんです。

「読書は苦手だけど読み聞かせはすき」ってお母さんも結構いたりするので、そういうお母さんのためにも親子それぞれ楽しむことが出来るような本を紹介したいです。

ーーーいまはネットで本を買うって一般的になってるかなとは思うんですけど、それでも内容の確認を出来ないものを売ることについて抵抗があったりしますか?

それはやっぱりあります。

でも、小さい子供がいるときって本屋さんに行っても自分のための本を選ぶ時間ってほとんどないんですよね。

だから、親目線で本を取りそろえておけば、WEBという性質上24時間いつでも探すことができるんです。

ーーー時間に関係なく探せるというのはネットの強みですよね。

赤ちゃんがいたりすると、夜中や明け方に授乳とかでひとりぼっちを感じてしまう時間があるんですよ。

そういうときに語り掛けられるようなメディアになればいいなと思っています。

オンラインはそのままに、今春、実店舗をオープン予定

ーーー最近ではWEB上だけではなく実店舗でも販売することもあると聞きました。

自分だけの店舗を作ることも昔は挑戦したこともありましたが、実力不足ですぐにやめてしまいました。

その時の経験を生かして今年の春「シェア本屋」をはじめます。

ーーー「シェア本屋」というの初めて聞きましたが、どういったものなんですか?

「シェア本屋」というのはみんなで家賃と棚をシェアして、それぞれが店主として店番やイベントを行う仕組みのことです。

そうすると、自分だけが選ぶ本が並ぶのではなく、ほかの人が選んだ本も見ることが出来るので、親子以外の方にも楽しんで頂ける空間になると思います。

ーーー店主さんごとの個性が見える本屋なのですね。

ほかの人の棚を見ることで客観的に自分を見つめ直せたり、参考になることとかも出てくると思うんです。独りよがりにならなくて済むところもいいなあと思っています。

ーーーいまはどのくらい集まっているんですか?

おかげさまでもうすぐ10人になります。ひとりで本屋を開こうというよりもハードルがずっと低いので「それなら私も」と手を挙げてくれる店主さんも多いみたいです。

ありがたいですね。

ーーー場所はどこで始められるんですか。

最近、松戸に「せんぱく工舎」というシェアアトリエができたんです。

そこの一室を借りてシェア本屋を始めます。

「せんぱく工舎」というのはシェアアトリエですので、たくさんのクリエイターが集まります。

なので、関連のワークショップが出来たり、お互いのお客さんがお互いのお店に流れる可能性もあるかもしれないと考えています。

例えば、本屋さんの隣はスコーン屋さんで、コーヒー屋さんも並ぶので、コーヒー片手に本を眺めることもできます。

本屋さん、として一軒やるわけではないというところがまた面白くなりそうだなと思っています。

「ローカルにやっていく」というこだわり

ーーー松戸という場所を選んだのはなぜですか?

ローカルにやっていきたいんです。

以前、一人で本屋を開いたときは、住んでいた土地の隣の町だったので、コミュニティを広げていくことが難しかったんです。

繋がりを作っていくにはやっぱり地元に根付いてやっていくことかなと、そのときにとても感じました。

私の町には本屋がありません。

子供たちが、気軽に立ち寄れる本屋がないんです。

だから「ないなら作ろう」と思いました。

ぴん、とくる物件がなかったのですが、せんぱく工舎で得た経験をいつか自宅近くで活かしたいですね。

理想としては「通学路に一軒の本屋さん」があることなんですよね。

本屋って文化の発信地になったり、交流が生まれる場所でもあると思うんです。

ーーー確かに、そうかもしれませんね。でも駅前などではなく、なぜ通学路に一軒なんですか?

通学路ってことは、住宅地が集まる場所で多世代が住んでいる可能性が高いじゃないですか。

そういったところに本屋さんを開けば、コミュニティが生まれていくのではないかなと思っているんです。

本を身近にするという意味では図書館ももちろん大切ですが、新刊って本屋さんじゃないと予約待ちで何か月も待つなど探しにくかったりもすると思うので、子供たちが自分がこれ!と思うものを気軽に手に取れるようにしたいな、と思っています。

反応があるかなと不安でしたが、千葉でシェア本屋さんをやりたいと声を挙げたら、「わたしも」と賛同してくれる人もいたので、可能性は感じています。

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「読書が苦手な親御さんは別に無理する必要はないと思います。ただ、気持ちの共有が出来ればそれだけでもいいのではないでしょうか。」と力いっぱい児童書について、本屋の未来について語ってくれた絵ノ本さん。

今回、詳しく伺うまでは「シェア本屋」という仕組みがいまいちピンときていなかったのですが、自分のお気に入りをそっとみんなに見てもらって、「すき」を共有できることなんだと教えていただくことが出来ました。

それはちょっぴり恥ずかしいかもしれないけれど、それ以上にすごく嬉しいことかもしれないなと、聞いている私までわくわくしてしまいました。

今度、絵ノ本さんが作ろうとされている松戸のシェア本屋については、独立に向けて試しでやってみてもいいし、もちろんただの趣味として出店してもらってもいいそうです。

みんなで試行錯誤して良いものをつくってやっていきたいということです。

現在、店主さんを絶賛募集中ということなので、松戸近辺で気になる方はぜひ連絡をしてみてはいかがですか?


また、このシェア本屋を開業するためにクラウドファンディングにも挑戦されています。

ぜひこちらもチェックしてみてください!

クラウドファンディングの詳細ページはこちらから!

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絵ノ本さんとは、「SUSONO」という共創コミュニティがきっかけで今回、お会いすることができました。
「本がすき」「中でも児童書がだいすき」という共通点だけで「じゃあ会いましょう」という流れにスムーズに進むことが出来たのはSUSONOがあるからこそだと思いますし、本当にありがたいことだと思います。

シェア本屋という仕組みもとても面白くと感じたので、絵ノ本さんが今度運営される松戸のシェアアトリエはもちろん、ほかの本屋さんも覗いてみたいと思います。

絵ノ本さん、今回はお忙しいなか素敵な時間をありがとうございました。

親子絵本専門店NanuK公式サイトはこちらから!


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もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。

わたしもあなたのことがすきです。
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本を読むのでおうちに帰ります。

児童書とミステリーとファンタジーがすき。でもなんだかんだ言って雑食。
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