対局日記#326 対局の心構え

2022/5/22

私は、特にネット対局で知り合いと指すのが大の苦手である。
というのも、なぜか「かっこいい手」みたいなのを指したくなってしまう。あとは「強い人であること」を演出したくなってしまう。

それで何が起きるかと言うと、「不自然なノータイム指し」と「思考のひずみ」である。

まずはこの局面、▲3六銀と上がったが、これは研究でもダメとしている変化。すでに焦りが垣間見えている。


次にこの局面。
ここで▲9五角が魅力的に見えたので、それを絡めて攻めを考えた。
そこまではよかったのだが、▲3六歩△同歩▲同銀△3五歩▲2五銀とかなり短兵急な攻め方をした。
銀をもらって▲9五角と出れば攻めが決まりそうな気がしたし、何より”カッコイイ”気がした。△8四銀と受けられても良くわからないが、とにかく”こんな手を思いついたから披露したい”という気持ちになっていた。

結果、少し考えれば気付くような受けに気付かず、いきなり形勢不利になる。これに関しては半分実力だが、危険センサーが一切反応していなかったのがひどい。


これは一番ひどかったところ。
かなり攻め立てられているが、まだ互角の局面。
ここで「こんな場面で落ち着いた手を指せるということを証明して、強くなったと認めてもらおう」的な考えが浮かんで来て、▲2四飛△2三歩▲2八飛とする。

どう考えても最悪である。
歩切れになるならまだしも、どうやっても先手陣は壊滅するのが目に見えている。▲2六桂という狙いはあるが、明らかに遅すぎる。

ここで、さすがに自分の失態に気付いて「こんなことせずに▲1六桂があったじゃないか」と悟った。
そこでさらに「▲1六桂という普通の手にすら気付かなかった。そんな手も見えていないのか、なんて相手に思われたらなんて恥ずかしいんだ。最近好調なのに、こんなに弱いのかって思われてしまう。」という思考のねじれが発生し始めた。

最後の局面。
ここで▲2六桂と方針を貫けば、まだもう一山あったかもしれない。

しかし、歪んだ思考のせいで「▲1六桂をなんとしても実現しなければ」と再び▲2四歩を着手。

甘すぎてひどい。もはや△同歩しか考えていなかった。
当然△3九角と打たれ、完全に終わっている。


もちろん「油断しなければ勝てた」などという言い訳をするつもりはなく、単純に実力が及んでいなかった部分も多々ある。
しかし、あまりにも思考が歪み過ぎているということに、改めて気付いた。

こう書いているうちに気付いたのだが、多分ネット対局に限らず、これは実際に盤を挟んでも頻繁に起こっている現象のような気がする。

特に「自分より格上(だった)で交流が深い人」が苦手。こちらが尊敬の念を抱いているのと、実力を認めてもらいたい欲求が混ざり合い、必要以上に良い勝ち方を目指してしまう。いやむしろ、「認められつつあったから、弱い部分を見せたくない」という方が正しいかもしれない。

性格の問題だと思うが、私自身この考えが非常に強い。停滞期が長すぎて、自分で自分のことを認めてあげなかったからかもしれない。

とにかく、どんな手を指したところで相手は大した気にしていないし、ましては好手に見える手ほど薄っぺらいということだ。もう少し自分に自信を持ってはどうだろうか。結局は普通に指してる時が一番強いんだから。

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