須賀敦子さん「ユルスナールの靴」

 この作品は白水Uブックスの装丁が一番しっくりきます。
「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。」で始まるこの作品は、寡作と言われるユルスナール作品の優れた書評集というのか、須賀さんの体験と重なり独自の世界を作りあげています。

 「ハドリアヌス帝の回想」、「黒の過程」、「世界の迷路(「追悼のしおり」、「北の古文書」、「なにが?永遠が」)などゆっくり噛みしめるように味わうすぐれた作品の数々。

 個人的には初読時「黒の過程」が一番引き込まれましたが、「追悼のしおり」の固有名詞や地理的条件、歴史的背景をじっくりと確認しながら何度か読みすすめると数々の作品の背景が見えてくるような気がします。

 ユルスナール作品を読んだ後で須賀さんのこの作品を再読すると、共感できるポイントが増えていることに気づきます。
 最近、ユルスナール作品を置いている本屋さんは珍しく、なかなか手に入らないので、もう少し流通させてほしいところですが・・・

「ユルスナールの靴」2001.11.1刷
白水uブックス/須賀 敦子

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