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時空を超える歌声。

 私は映画にはたまにしか行きませんが、そのたまたまに映画を見に行ったので感想文を書きたいと思います。ネタバレしたくなければ、読まなくてもいいと思いますが、ネタバレするほどの内容でもありません。
 見た映画は、「キリエのうた」です。岩井俊二監督、アイナ・ジ・エンド主演の作品です。
 あらすじとしては、アイナさん演じる、「歌う時だけ声が出る」女性・キリエの周りで色々とおこるという話です。つまりこの映画を語る上で、アイナさんの歌声を抜きにして語ることはできません。アイナさんにあて書きしたのかは分かりませんが、確かにあれだけ存在感のある人は他にいないですからね。
 とはいえ、「アイナ・ジ・エンドって誰?」という人がいるかもしれないので補足しておきます。彼女は、今年の6月に解散したBiSHという6人組グループのメンバーで、メインボーカル的な役割をしていました(一応6人とも歌うんですけどね。)そのBiSHの代表曲である「オーケストラ」をソロで歌った動画が「THE FIRST TAKE」で一昨年公開されているので、見てみてください。

 聴いてわかるとおり、非常に個性的な歌声の持ち主です。だからこそこういう映画に呼ばれたのだと思います。私は好きですが、おそらく好みが分かれると思います。映画内では、彼女が色んな歌を歌うので、彼女の歌声がそこらじゅうで流れています。だから彼女の歌声が苦手な人は見ない方がいいかもしれません。
 キリエさんは宮城県石巻出身ですが、小学生のときに東日本大震災で被災して、お姉さんをはじめ家族を失います。「キリエ」は芸名で、本名は「ルカ」というのですが、「キリエ」というのはこの震災の時に亡くなったお姉さんの名前です。(ちなみにお姉さんの役はアイナさんの2役です)このときの震災の描写がかなりガッツリあるので、それにトラウマがある人は見ない方がいいかもしれません。私が見に行った映画館の入り口には、「震災の描写があります」という注意書きの立て看板が立っていましたが、もうチケットを買ってしまったのに今さら言われてもという気がしないでもありません。
 ある日、キリエさんが都内(多分新宿の甲州街道沿い)の路上で歌っていると、緑色の髪の女性が現れて、「マネージャーになってあげる」と言いだします。この人が広瀬すず演じる「イッコ」さんです。どんだけ~(違)。実はこのイッコさん、北海道の帯広での高校時代、1学年下のルカさんと会っています。この2人を引き合わせたのが、イッコさん(女子高生時代は別の名前だった)の高校時代の家庭教師で、キリエさん(お姉さんの方)の元彼という設定の夏彦さん(SixTONESの松村北斗)です。ルカさんは震災の後大阪に行くのですが、大阪に行ったのは、夏彦さんが大阪の大学に進学するというのを聞いたかららしいです。しかし結局夏彦さんは震災のどさくさで大阪に行くことができず。大阪で身寄りのないルカさんは児童相談所に保護されることになります。
 帯広の人には悪いですが、この帯広パートはいらないと思います。そもそも石巻の人であるはずの夏彦さんがなぜ帯広に現れるのかも分からないし、(震災で大学進学を諦めて帯広の牧場に来たということらしいけど)身寄りがないはずのルカさんも大阪からなぜか帯広に行っているわけで。イッコさんは、「どこから現れたか分からない謎の存在」ということにして、あの新宿の路上で初めて会ったことにしておけばよかったと思います。大阪パートも、せめて仙台にしておけばまだ分かります。あの震災のどさくさの間、小学生が石巻から大阪まで一人で行くというのはあまりに不自然です。
 そういう細かい設定は気になるし、映画の上映時間が3時間もあるのも気になるポイントです。なんとか帯広パートと大阪パートを簡単にまとめて、2時間ぐらいで収めてほしいとも思うのですが、別に巨匠にたてつこうとか思っていません。それはともかく、この映画はとにかくアイナさんの歌声を浴びまくる3時間です。それが主な目的です。歌がメインとはいえ、アイナさんは女優としても、よくやっていたと思います。今までほとんど演技の経験はないと思いますが、「歌うとき以外に声が出ない」という、聞いたことのないような設定(といいながら出てるんですが)を難なくこなしたし、お姉さん役の女子高生の役もよかったと思います。これからも女優としてもオファーがあるかもしれませんが、普通のドラマとかだと浮きそうです。やはりこれぐらいの濃い作品じゃないと。あとルカの子供時代を演じた子役の人も良かったと思います。
 それにしても、アイナさんあってのこの映画なので、これでもう彼女が何らかの拍子で表舞台からいなくなったら、この映画もお蔵入りです。こんな映画を作ってもらったんだから、アイナさんはこれから10年でも20年でも芸能界でがんばらないと、もったいないです。文春とか色々気をつけてほしいです。
 ちなみに、今回のトップ画像は「キリエ」ならぬ「切り絵」なのですが、この女性、なんとなくアイナさんに似ていると思いませんか?


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