EastWest QLSOと Hollywood Orchestra Diamondについてのメモ

最近はEastWest製品でオーケストラ曲を作っていて、色々と分かってきたことがあるので、これからHSやQLSOを買おうかなーと思っている方がいれば参考になりそうなメモを記録しておきます。今は、QLSO白銀からhollywood orchestra diamond(以下HOD)に乗り換えて使っています。
両方ともデータが膨大なので、SSDでの読み込みは必要です。QLSOは160G、HODは640Gが入るSSDが望ましいです。
QLSOの使用歴は4年、HOはまだ数週間程度です。

QLSO

●QLSOの良いところ

・既に音作りがされているので、そのまま使ってもある程度は格好の付いたキャラクターの音が出る。特に哀愁系、クラシック系には相性が良い。
・動作が軽い(他の激重プラグインに比べれば比較的良い)
・パッチの読み込み時、エンベローブが自動的に楽器に適した値に設定されるため、初心者の方でもそれらしい音を出しやすい。
・QLSO金は安い セールだと16000円くらいで買える時もある。安いけど結構使い込めば、なかなか格好の良いオーケストラも作れる。
・面白いアーティキュレーションが入ってる(エフェクト系とか)
・昔からあるソフトで、改善を繰り返されてるのかバグがほどんどなくて動作が安定してる(これ重要)
・キースイッチのCubaseのマップデータが配布されていて、分かりやすく、よくできている。
・modホイールで、クロスフェードできるパッチがよく探せば実はある。
(modXfdってかいてあるフォルダの中にある)

●QLSOの気になるところ

・もともとホールで集音されている音なので、リバーブをオフにしても残響が消えることはないので、ポップスなどの弦として使用する時は注意が必要
・ダイナミクス(音量)は基本的にベロシティで操作するために、迫力のあるリアルなオーケストラにするには、狂気の沙汰、根気強く設定する必要がある(どの音源にも言えることだけど、これはマジで仕方ない)
・管楽器は迫力はあるものの、リアルな滑らかさはやや難しい。(エクスプレッションのカーブで補えることもある)金管や木管のアーティキュレーションがやや足らない、または補えないときがある。なぜかクラリネットだけアーティキュレーションが少ない(何故?w)
・木管楽器がややバサついて、音が前に来ないことがある
・全体的にアーティキュレーションの切り替え時に違和感がある
・レガート系のパッチはやや滑らかさに欠ける印象で、曲のテンポによっては合わないこともある

●補足

QLSO金と白銀は音質が全く違う。具体的には16bitと24bitの違いですが、立体感やステレオ感がまるで違います。白銀はとても良い音が鳴ります。また、音の距離感もクローズマイクが集音されているため緻密に調整することができます。金だとスネアがジャリジャリした音質ですが、白銀ではそれが改善されていて、シャープな音がでます。ステレオ感もあります。

Hollywood Orchestra Diamond

●HODの良いところ


・QLSOよりも多彩なアーティキュレーションと、温かみのある重厚な音質で、作り込めばかなりリアルなオーケストラにできる。
・QLSOよりも収録されている音の密度が高く、どのジャンルにも対応できる。
・パッチのネームが統一されていて、QLSOと比較してわかり易い
・本質的にはQLSOと同じなので、QLSOを使ってきた方には比較的意味が理解し易い。
・アーティキュレーションの切り替えが非常に滑らかで、不自然にならない。
・ディビジマイクも収録されているので、緻密なストリングスのプログラミングも可能
・金管楽器、木管楽器の音がとても良い。滑らかさもある。アーティキュレーションも豊富で、特に木管はバスフルートまで収録されてる(どうやって使うんだコレ・・)QLSOとはキャラクターが全く違う上品な音で、使い易い。
・金管楽器のエフェクト軍が豊富に収録されてる
・レガート系のパッチはスロー、ミドルテンポの曲にとても良く溶け合う
・残響が少なく、ドライな音なのでポップスなどにも使用できる。
・パーカッションはQLSOとは違ってやや明るい音なので、明るい曲には相性が良い

●HODの気になるところや要点

・音作りが全くされていない状態のマイクで集音された生音なので、迫力のあるオーケストラにしたい時は根気強く緻密な音作りが必要で、何もやらなければミドルの量が過剰になりがち。良い意味では、ひと昔前のハリウッド映画、ETやスターウォーズのサントラなどで聞くあの音色にとてもよく似ている(エンジニアが同じなので)

・初心者の方には非常に難しい。良い結果にも悪い結果にもなりえるプロ向けの音源。今時のワイドレンジで、ソリッドな音作りが欲しい時はEQなどでローからミドルの量を調整する必要がある。
・ダイナミクスは基本的には(CC01)MODホイールで操作できるが、Sus系のパッチは(CC11)EXPでないと操作ができないこともある。
パッチによってその定義がさまざまで、マニュアルを読んで、ダイナミクスの設定を覚えないと大変で、リアルなオーケストラにするにはエクスプレッションカーブを根気強く書く必要がある。
パッチによってはベロシティでダイナミクスを操作するものもある。(白目)
・エンベローブでアタックやリリースが問題ない場合は、CC11は直線的のほうが良い結果をもたらす。CC11エクスプレッションは、階段状に書く方法と曲線ツールや滑らかなフェードで書く方法とあるがフレーズによって使い分ける。フェード中はやや音がザラつくので激しく書きまくると輪郭がボケることがある。

・HO金にはクローズマイクが収録されていないらしいが、これはかなり致命的で、芯のあるオーケストラにするにはクローズマイクの量を適度にブレンドしなければならない。midマイクのみだとステレオ感を出すにはやや不十分。
・リバーブは別のメーカーで、センドで送った方が音作りはしやすい。スタンドアロンのコンボリューションリバーブはややステレオ感に欠ける。パッチを読み込むごとにリバーブの種類がバラバラなのも気になる。

・パッチをただ読み込んだ状態だとエンベローブの設定が適当で、自分の作りたい曲に合わせてエンベローブを調整する必要がある。特にアタックが最速、リリースは長めに設定されていることには注意が必要。何の設定もなしに使うと、ヨレヨレのシャツみたいな雰囲気のオケ曲になる。
・準備されているキースイッチのマップでは、HODの力を発揮するには不十分で、パッチを個別に設定するやり方のほうが良い結果をもたらす。

・short mod系、Run系のパッチは不具合が多く、使うのが難しい。音がぶちぶちいく上にテンポにも同期しない。
・楽器の適正音域から外れる場合、時々音程がおかしいことがある(オーケストレーションでは基本的に適正音域を使うため、これは特に気にならない。)
・激重プラグインなので、メモリは最低16Gは必要。

・ハープの音だけなぜか別売り

・2017年の時点でPlayエンジンのレガードは少し改善されているものの、曲のテンポによっては弦などのレガード系のパッチが合わないことがある。
特にミドルテンポ以上の楽曲や、早いパッセージにはsus系のパッチをレガートモードにした奴で補うこともできる。susアタック系のパッチを組み合わせてスピード感が失速するのを防ぐこともできる。
・弦のスピカートのベロシティがやや適当で、特にpp〜mfにかけて音が階段状に聞こえる。ベロシティカーブを設定しないと少しやりづらい
・ダイヤモンド版で、パッチごとにマイクのポディションがなぜかバラバラに読み込まれる

以上です。まとめると、リアルなオーケストラにするにはQLSOでもHODでも緻密なプログラミングが必要で、どちらかというとQLSOのほうが初心者向けて簡単に扱える設定になってる。HODは上品なオーケストラを作りたいプロ向けで、生音に近いマイクで収録された音は提供するけど、派手にしたい時のキャラクターは自分で作ってね。って感じの音源で、扱い方が難しい音源です。HO金は16ビット版でやや音がざらついているので、とても扱いづらいと思います。

今は8dioやspitfire audioなど、他にも優秀な音源もありますが
リアルなオーケストラを作りたいのであれば緻密なプログラミングが必要になるのはどの音源も変わらないと思っています。
楽をすればするほど情報量も少なく、ディティールの少ない平坦な音楽になるのはどの音源を使っても同じです。

これから新しい音源を買うのはだいぶ先になると思いますが、しばらくはHODを使ってオケ曲を作っていきますよ。
まだ謎も多く、新しい発見も多いです。スルメみたいな音源で個人的にはかなり気に入っています!


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