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投資銀行を楽しむ為のマインドセット

「投資銀行業界を志望する理由」を面接で聞かれたら、「激務だけどやりがいがある」と答える学生は多い。しかしいざ入社すると、忙しすぎてやりがいに気付けないまま辞めていく若手をたくさん見てきた。東京とNY本社の二拠点で積んだ経験をもとに、IBDの醍醐味をジュニアバンカーの視点から簡単にまとめてみた。

ピッチ

案件を獲得するための提案。若手は上司の指示に沿って、プレゼン資料や財務分析を作る。資料作成はストーリーの構成力定性的・定量的考察力が鍛えられるので、コンサル的な仕事が好きな人には楽しい。特にわくわくするのは答えがないオープンエンドなディスカッション。例えば、会社の方向性を議論するStrategic Reviewでは、どの事業を売却すべき、どの事業を強化すべき、どのタイミングでファイナンスすべき等、様々な観点から提案する。上から来る指示がフワッとしてればするほどやりがいを感じるし、自分のアイデアが実際に資料に使われると達成感が大きい。

ただ、提案資料は所詮机上の空論なので踏み込んだところまで考える癖や力は付きにくい。私が若手の頃気をつけていたのは、どんな作業でも背景を理解したうえで取り掛かり、受け身にならず、常に一歩先を考えること。時間の許す範囲で「So What?(だから何?)」と自分に問いながら資料を作ると、ピッチ作成の時間がより有意義になる。

また、若手でもミーティングで話す機会をもらうことがあるが、これはかなりチャンス。自分が作った資料を実際に話す立場になると、もっとこう作ればよかった等、見えなかった部分が見えてくる。また、話すことでクライアントから直接フォローアップの連絡が来ることも増え、頼られることでやる気に繋がる。投資銀行のミーティングは普段関われないポジションの人と話すことも多いので、失敗を恐れずプレゼンの場数は出来るだけ踏むべき

ファイナンス案件

DebtやEquity案件。プライシングやブックビルディング等の案件の根幹部分はCapital Markets専門チームのDCMやECMが主導する。ピッチや後述のM&AよりIBD若手が直接リードするワークストリームは少ないが、ファイナンス案件は非常にダイナミックで面白い。

プライベートサイドにいながらマーケッツの動きをダイレクトに感じることができて、ヒアリングを通して投資家の生の声を聞くこともできる。特にIBD若手で将来スタートアップを志す人にとってファイナンスの経験は絶対にためになるので、ディールプロセスや金融規制など積極的にCapital Marketsチームに質問して学ぶことをお勧めする。また、何故このタイミングでファイナンスが必要なのか、最適なファイナンス手段は何か、投資家はなぜ本案件に参加するのか、自分なりの考察を立てながら業務に取り掛かるとより面白みが増す。

M&A案件

主に買収や売却の手伝い。正直M&AをやることがIBDの一番の醍醐味だと思うし、どれだけM&A案件をこなしたかでバンカーの価値が決まると言っても過言ではない。ピッチと違って作る資料やミーティングの全てに意味があるからやりがいがある。モデルもプレゼンもここまでやる必要があるかと思うぐらい詳細を詰めるし、ミスが許されない緊張感がある。プレッシャーがある中で常にパフォームしなくてはいけないので、精神的タフネスの効果的なトレーニングになる。ただ、細かい作業をしていると、ビッグピクチャーが見えにくくなることがあるので、そこは注意しながら仕事した方が良い。

決まったスケジュールがないのでいつ何が起こるか分からない。案件中はパニックになることもあるが、緊急事態に臨機応変に対応できる力はめちゃくちゃ付く。また案件毎に問題点が異なるので、問題解決の力は意識しなくても伸びる。想定外のことが起きたときは焦るが、逆にチャンスだと思って、まずプランを書き出し、優先順位を決め、一つずつ解決していけば大丈夫。

財務・法務・税務・会計など複数のワークストリームが同時並行で進むので、プロジェクト管理の能力もかなり鍛えられる。これに加えてクライアントや相手側アドバイザーとのやりとりもある。また案件が大きければ、社内チームも大きくなる。このプロジェクトをまとめる能力は将来どんな仕事をするにも必ず役立つ

一方、案件進行中はプライベートの時間はほぼなくなるが、投資銀行に入った以上それを犠牲にしてでもやる価値があるのは明白。


以上、私が東京とNYで感じたIBDのやりがいを纏めてみた。激務の代表格として知られるIBDだが、幾つかのポイントを押さえれば同年代に大きな差をつけて楽しみながら急成長できるので、若手に最適な職場だと思う。投資銀行に限らず激務な環境下では、目の前の仕事に追われて見落としがちな点が多いと思うので、意識しながら作業に取り組むとより仕事が楽しめ、充実したキャリア形成が実現できるはず。

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