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【一幅のペナント物語#21】寂れゆく高原鉄道、ここにもひとつ

◉「小海線の旅」なんていうから潮騒の中を行く海沿いの路線かと思いきや、背景にはいかつい山々。どういうことかと調べてみれば、山梨の小淵沢駅と長野の小諸駅を結ぶ山間のローカル線だった。ペナントの右から左へ、煙をたなびかせて颯爽と走る蒸気機関車はC56だ。小海線では"高原のポニー"と呼ばれ、1972年(昭和47年)まで走っていたという。二両目から効果線を使ってスピード感ある処理になってるのがいい。

◉背後のいかつい稜線は八ヶ岳連峰。小海線は鉄道好きな人たちからは"八ヶ岳高原線"の名で親しまれているとか。僕も若い頃、まだ清里がキラキラチャラチャラ華やかで元気だった頃に訪れたことがある。田原俊彦が高原の赤い電話ボックスで松田聖子にハッとしてグッときた時代(あのCMで高原ブーム到来したとか)。僕は残念ながら鉄道ではなく、車での訪問だったけれど、何故かいまだに押し入れの中に野辺山駅のメルヘンチックな駅舎を納めた写真プリントが残っている。

◉こんな動画を見つけた。

赤字ローカル線の話は、僕にとっても身近な話題だ。昨年11月に地元のローカル線・木次線を走っていた観光トロッコ列車おろち号の運行が終了したが、小海線と同じようにJR西日本の中でもワースト2位の赤字路線だ。この路線には、JR西日本の中で最も高い場所にある三井野原駅があるので、JRで最も高い場所を走るという小海線といろいろダブって見える。動画の中で沿線自治体で、延命のための取り組みを頑張っておられる様子が紹介されているが、観光収益で日常利用の穴を補填するのは難しいことを知っているので胸が痛い。景色は本当に素晴らしいので少しでも長く、存続してくれると嬉しい。

八ヶ岳を背景に(撮影者:tora_traveler様)

◉それはそうと、こんな山の中なのになぜ小海なのか? しかもこの路線には「佐久海ノ口」とか「海尻」という地名もあるのだ。調べてみると、その昔、八ヶ岳の爆発で千曲川が堰き止められた湖沼を土地の人たちが「海」と呼んでいたことに由来があるようだ。海を見たことのない人たちにとっては、それほど広大な湖だったのだろう。


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