見出し画像

【一幅のペナント物語#54】二人の御婦人の行方と新潟市民が愛して止まぬ橋

◉「沖縄」とか「東京」とか「奈良」「京都」などなど、都道府県単位で括ったペナントはよく見かけるが、こちらは「新潟"市"」のペナントである。うっかりすると「CITY」の文字を見落としそうだが、気付けてなにより♪ このペナントのレア度を見逃すところだった。

◉さっそく描かれているモチーフの探索に挑むべく、「新潟 銅像」とか「新潟 彫像」とか「新潟 噴水 像」で検索をかけてみるが、一向に見つからない。出てくるのは田中角栄先生の銅像とか、一時期世間を賑わせた山田太郎のケツバット記念写真ばかりである。2015年頃にバズりまくり、撤去騒ぎにもなったドカベン像たちだったが、どうやら無事に今もスイングし続けている模様。水島新司センセも天国で見守っておられるのだろう。

それにしてもなんと表情豊かで躍動感あふれる女子たちだろう

いかん、脱線してしまった。そう、ペナントの銅像が見当たらないのだ。根気強く調べ続けていたら、ようやく、こちらのブログで主がアップしている写真を発見。新潟駅前にその「裸婦像」の姿があった。

sasablog 脈絡のない雑多な写真 さんのサイトより

で、さっそくGoogleマップで現地に飛んで見ると・・・

ん?? いないぞ。・・・というか駅が新しくなってる!そういやそうだったな
3年間に遡ってみると、駅舎は昔の姿に・・・でも彼女たちはいない
さらに5年前に遡ってみる。やっぱり、いない。ロータリーの形は変わってるけど
さらに3年遡ると・・・・いたーーーっ!

というわけで、2011年10月のストリートビューで、sasablogさんの撮影した場所に裸婦像のお二人を発見。こんな感じでまさに新潟駅前のシンボルとして存在していたのだ。2009年のsasablogさんの投稿によれば、

新潟駅万代口の正面には、噴水と裸婦像がありました。
先ほど検索した新潟市議会の議事録によると、
「1958(昭和33)年に新潟駅が現在の位置に移転したのと合わせ、周辺において駅前都市計画事業が行なわれ、その竣工記念モニュメントとして1960(昭和35)年に噴水とともに設置されたものです。」
とありました。

sasablog 脈絡のない雑多な写真 さん「日帰りで新潟」(2009年6月6日)の投稿より

ということなので、ペナントの生まれは1960年(昭和35年)以降であることは確定。どこかスキー場ペナントにも通じるシンプルでモダンなデザインではあるが、旗竿のリボンなどが退化して、リリアンモールが付いていたりするので、昭和40年代前半頃のものだろうか。それにしても、じゃあ今、この御婦人方はどこへ行ってしまったのか? もうこの世にはいなくなってしまったのか? 気になって更に調べていくと、トリップアドバイザーの投稿で手がかりを発見した。

新潟駅万代口から西へ160mほど行ったところにある「石宮公園」に、御婦人方の姿を発見。

お元気そうで何より!

公園の銘板によると御婦人方は駅再開発に合わせて、2014年(平成26年)3月にここに移設されたとのこと。

「Tripadvisor」MMSM1103様の投稿より

◉御婦人方の健在を確認した後は、彼女たちの背後に描かれている風景のほうである。右のビル群については特定するのが難しいので、左側に描かれている特徴的な橋脚の橋のほうを調査すると、あっさりと「萬代橋(ばんだいばし)」だと判明した。街を貫いて流れる信濃川に架かるこの橋は、国の重要指定文化財にも指定されており、新潟市のシンボル的な存在なのだと、あちこちの記事で紹介されている。

この1929年(昭和4年)に竣工した三代目の橋が、ペナントに描かれているものであることは間違いないのだが、良く見ると絵のほうの橋に描かれている照明灯の形が現在のものとは違っているのが解る。

現在の萬代橋。照明灯は真っ直ぐだ(出典:Wikipedia 投稿者:DAI-nk様

昔の絵葉書などで確認すると、三代目として竣工した際にはこの真っ直ぐな形の照明塔なのだが、その後、昭和40年代以前のどこかのタイミングで絵の中の形状のものに付け替えられたようで、それがわかる写真を見つけた。

「新潟バイパス 半世紀のあゆみ」(新潟国道事務所HPより)

ペナントに描かれているのはこの時代の萬代橋に違いない。同じく新潟国道事務所が作成した『知るほどなるほど萬代橋!?【萬代橋歴史読本】』という資料を読み込むと、1964年(昭和39年)の新潟地震の被害を受けて行った復旧工事の際に、この形の照明灯になったと思われる。つまり、このペナントは、1960年(昭和35年)から1964年(昭和39年)の間に作られたものだということになる。おー、なんかスッキリする。

◉その後、2004年(平成16年)に萬代橋を、橋ができた75年前の姿に復元する「萬代橋復元プロジェクト」が発足し、多数の市民の募金などによって、真っ直ぐな形の照明灯が蘇った、というのが事の真相のようだ。以下に新潟市民の萬代橋への愛が溢れまくっている、全28ページに及ぶこの資料のPDFリンクを貼っておくので、ぜひ読んでみてほしい。一本の橋のエピソードだけで、ここまでのものを作るのだから、その愛はハンパではない。

閲覧・ダウンロードはこちらから!

◉なぜか僕のまわりには新潟出身者が多くて、とくに結婚して旦那の里に嫁いできた女性が多くいる。島根と新潟、相性がいいのだろうか? 今度、新潟出身者に萬代橋のことを聞いてみたいなと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?