見出し画像

【一幅のペナント物語#35】価値観変化で絶滅した高知の「土佐闘犬」

◉「KOCHI 南国土佐」の文字が示す通り、高知のペナントである。ちょっとラスタカラーっぽいのは南国を意識してのことか。一点突破のビジュアルは、化粧まわしに書かれた"横綱"の文字も雄々しい土佐闘犬だ(土佐犬という言い方もするが、正式には先日、群馬・伊勢崎市の公園で暴れてニュースにもなった"四国犬"の別称が土佐犬らしく、土佐闘犬とは区別すべきものらしい)。昭和から平成にかけて、高知、とくに桂浜を象徴するような存在だったが、いまはもう見ることが出来なくなったロストカルチャーである。

◉センターの操業は1964年(昭和39年)、桂浜の施設が出来たのは1973年(昭和48年)だそうだ。その後『竜馬がゆく』などの影響で、高知に観光ブームが巻き起こり闘犬も全国区に。県も様々なイベントを主催したが、とある事件をきっかけに集客が低迷し、2001年(平成13年)に民事再生法適用。業績回復を目論むも苦戦し、そのうち動物愛護の観点からも、その存在に批判が集まり、2017年(平成29年)に完全に消滅する形となった。闘犬そのものが法律で禁じられているわけではないが、日本のどこを探しても闘犬を見世物にしている場所は無いと思われる。

◉実は土佐闘犬センターだった時代に、1度見にいったことがある。当時は桂浜に行ったら、まあ、ここと水族館くらいしか見るものが無かったので、そこそこの観光客が訪れていたのではないかと思う。ただ、僕らが行ったときも客はほとんど居なくて、予定された時間に場内に入ると、まず動物臭のキツさに怯んだのを覚えている。そして闘犬そのものも、人間に焚きつけられて強そうなほうが弱そうなほうを一方的に攻め立てる感じで、少なからず出血もあったので見るのが気の毒だった。実物を見て後悔した観光地は数あれど、闘犬は別の意味で「見なきゃ良かった」と思った稀有な体験だ。下は小奇麗にリニュアルされた「とさいぬパーク」の様子が解る記事。僕が見たのはもっとコンクリートうちっぱなしの寒々とした場所だった気がする。

◉2年前に仕事で高知を訪れる機会があって、夜ではあったが桂浜に行ってみた。くだんのセンターの面影はどこにもなく、土佐闘犬たちは今、どこでどんな暮らしをしているのか、なんてことをちらりと思ったりしたものだ。ということを書いていたら、こんなNPO法人を見つけた。土佐には拠点も関係者もいない、というのが面白い。土佐に居場所を失った土佐闘犬たちは、いま、高知以外の全国各地に愛される場所を見つけたということか。

◉グッズとしては闘犬はまだ健在のようだけど、そのうち「なんでこれが高知なの?」なっていう世代も出てくるんだろうな。

「土佐犬メガストラップ」こういうストラップも最近着けてる子見たことない
(高知特産通販さとのわHPより転載)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?