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【一幅のペナント物語#25】未来都市?ディストピア?Power of the Tower!

◉とても気に入っているペナントのひとつ。未来感溢れるタッチで、謎の青白い爆発を背に燦然と聳え立つ「東京タワー」が描かれている。タワーをぐるりと取り巻く魚眼レンズを覗いたような高層ビル群もいい。中央の「TOKYO TOWER」の文字も既成フォントではなく、オリジナルのレタリングで、そこはかとなく"カッコイイを目指してみた"感が醸し出されているじゃあないか。右側先端部の二重橋も新旧東京の対比を見せつつ、限られたスペースに収めるのに格好のモチーフになっている。個人的に好きなポイントは、やはり青白い爆光と、英文字をさりげなく縁取っている赤ライン、そして二重橋の上に覗く、黄色い空と赤い雲である。「K」のアンバランスさも含めて、芸術点9.1くらいあげたい。

◉日本の首都・東京のシンボルとして世界に名をとどろかせてきた東京タワー。戦後復興の狼煙でもあり、高度経済成長の旗印でもあった。新たなタワー、スカイツリー誕生後もその存在感は揺らぐことなく保たれているような気がするのは僕だけではないはずだ。故に、これまでに数多くのペナントが世に送り出されてきたのは想像に難くない。実際に僕のストックの中にも別バージョンの東京タワーペナントが存在する。しかし、今回取り上げたこのデザインのものは、ネットで捜索をかけてもなかなか見つからないのである。先達の皆さんのサイトでも紹介されていないようなので、この一品の素性については全く不明のまま。

◉ただ、デザインという視点で見つめると、あきらかにそこには制作者のアイデンティティが宿っている。写真やスケッチ画のようなコラージュではないぶん、作者が思い描く「未来都市TOKYO」の姿が透けて見えるのが好きだ。個人的には全体から発せられているディストピア感満載の配色もお気に入り。ふと気を許すと「TOKYO TOWER」が「TOKYO POWER」に見えてくる。この作者が手掛けた他のペナントがこの世に存在するとしたら、ぜひお目にかかってみたいと思う。

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