異常ホール効果への雑感

3日連続で書き物が続いたので私にとっては新記録である。ともかくその場その時に考えていることをアウトプットすれば、そんなに時間もかからないし筆の進みも悪くない。今回も研究の話をしよう。

今日Natureのvolume581のアラートが届いた。当然コロナ関係の論文が多いのだが、自分の分野に近いところだと東大物性研中辻先生のグループの論文に目が留まった。

流行りのFeX系の物質で異常ネルンストが効果が大きくでたよ、といった結果だが、なんと中辻グループは直近のNatureにもWeyl系を扱った論文が出ている。

こちらも大流行りのmagnetic Weyl semimetalのMn3Snでの磁化反転の実証である。どちらもファッショナブルな材料+伝統的な(?)スピントロニクス関連のテーマでインパクト自体に疑問はない。さすが中辻研といったところ。

今回のnoteでは最近のこの分野に関連して、特にベリー位相がらみの物理現象で流行りの異常ホール効果に関して雑感を記そうと思う。(物理学的な検証はあまりしない。)異常ホール効果は主に強磁性体のホール抵抗を測定すると磁化に比例したシグナルが得られるということで古くから知られている現象だ。理論的な考察からスピン依存散乱による外因性の効果と、ベリー位相由来の内因性の効果によって説明される。

最近のスピントロニクス界隈の論文でよく見る流れは「トポロジカル物質(トポロジカル絶縁体、Dirac semimetal, Weyl semimetal)」なので「Berry curvature」が大きく、「異常ホール効果が大きい」というもので、特に最後の異常ホール効果が大きいことがウリにされていることが多い。だいたいの論文ではこれに第一原理計算がついていることが多く、そこからベリー位相を計算する運びになる。

学会に足を運んだ時みた光景として、大御所の先生になるほどここら辺の話をうさん臭く感じているようで、確かに私もそういう感触を受けることは否定できない。これは根本的にベリー位相が正確な分散関係の幾何学的な性質から計算されるものなので、実験的に裏付ける手法がほとんどないからであるようだ。この手の話の残念なところは、そのベリー位相の人為的な制御がかなり厳しいところにあると思う。確かに物理的には非常に面白い話なのだが、やはりスピン「トロ二クス」である以上、デバイスに近づけなくてはならない。この意味で最近の流行りはある意味で、物理学によって行くばかりになってしまっているのかもしれない。(自分のテーマはどうなんだよ!と言われればおなかが痛いが...)

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