せめて明日の朝までは
夜の目にはつめたい蒼を
夏の雲にはあわい月のひかりを添えたい
いまだけは
西の空から帰ってきた金いろの鳥に
あの世からのたよりを訊ねたら
ひろげた翼のいろが褪せた
満たされない想いがふいに消えるなら
全生涯はひと息に終わってくれてもいい
忘れられない甘い匂いが恋しくて
いとしい背中に爪をたてた
いつまでもつづく叫び声がかなしくても
傷つけずにはいられなかった
この苦しみはわたしも経験した
と詩人たちは言葉にする
だが失意の同族は歴史上にあまたいるとしても
かれらはわたしとは全く似てない
いま・ここにいる・このわたしは
比類のない存在なのだ
こんなにもいとおしく
こんなにも狂暴な情動をもつ
独りよがりな想いが破裂して
敗残者はおのれの醜態を歌うしかない
生をうつくしいと讃えるのは
ねがいが叶わぬものたちの凝固した悲哀である
笑え、頼むから笑ってくれ
せめて明日の朝までは
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