東京から意外と近い清水は何かとエモかった
天気がいい金曜日の朝9時過ぎ、ピザトースト焼きながらコーヒー飲んでウェブ眺めてたら、ふと清水に行きたくなった。
あと25分で出かける用意すれば、渋谷を9時50分に発つ清水行きのバスに間に合う。慌ててシャワー浴びて髭を剃り、歯を磨き、出発10分前にはマークシティ5階にひっそりあるバス乗り場にいた。
ここからバス乗るのは初めて。河口湖や軽井沢、遠くは酒田や仙台、今治まで、渋谷からバス1本で行かれることを初めて知った。
ふらっと行ってSuicaで乗れるものだと思っていたが、実はウェブ予約決済して座席指定しないといけなかったらしく、運転士さんが手書きのチケットをくれた。
清水には12時半前に着く予定。3時間弱のバスの旅だ。MacBookとノート、ノイズキャンセリングヘッドフォン持ちこんで、集中して仕事するにはちょうどいい*1。
上のツイートをしたら、「バスの中で腹出してるオッサンのセルフィーかと思った」「アップルマークがへそそっくり」などとネットいじめを受けた。
東名高速が海老名JCTでいつも通り渋滞していた上に事故もあって、清水についたのは1時過ぎ。仕事に集中していたので長くは感じなかったが、それより狙っていたランチを食べられなくなるのではと気もそぞろ。
駅前にある、短パンの男たちがバンザイしているサッカーの変な銅像(失礼)が意味不明でどうしても気になったので写真を撮ったりしているうちに、行きたかった「かね田食堂」も「いわし料理 善(よし)」も1時半前に売り切れじまい。
完全にランチ難民化しても困るので、「いわし料理 善」のお隣にあった「伸」というお店に飛び込んで、お母さんが一人で作っている太刀魚の煮付けの定食と生ビールを注文。淡白な太刀魚を、蒲焼風に甘辛く煮付けてその上に山椒が振ってあって、ご飯にもビールにも合う二刀流でなかなかよかった。太刀魚だけに。
14時発の清水港クルーズに乗るつもりだったのだが予定が狂った。だがお腹が一杯になってちょっとアルコールが入れば、バスが渋滞したことを恨めしく思う気持ちもどこかに行ってしまう程度には単純にできているので無問題。
フラフラと商店街を抜けたところで、ガレージからすごいクルマが出てくるところを目撃。
3代目スカイライン1500スポーツデラックスだ。半世紀以上前のクルマが現役で走っていた。ガレージから出すところをオーナーの方に無理言って写真を撮らせてもらった。
もう大興奮ですよ。鼻血出るかと思った。
そしてそこからすぐ先の、踏切の手前にフルーツタケダがある。日本で一番美味しいメロンジュースが飲めると聞いてやってきた。
さっきビール飲んだばっかりなのに、メロンジュースを飲むとすぐに童心に帰る、都合よくできたおっさんです。甘みと酸味、ミルクのまろやかさのバランスが最高。グラスの亀甲模様もよい。
お隣のソフトクリーム屋さんも名店だそうだ。
15時のクルーズ出航の時間に合わせ、街の中を見て回る。かつては軍需工場、貿易港、遠洋漁業の基地として栄えた清水だけれど、昔の盛り場は寂れてしまっている。
相変わらずフラフラしているうちに、クルーズ船の船着場についた。1200円で40分間の清水港内のクルーズ。今日は湿度も低く素晴らしい晴天で、三保の松原越しの富士山が海から綺麗に見える。
写真には撮れなかったが、清水港内に居ついたイルカの群れが見られた。こんなに街から近いところでイルカが見られるとは。
もう一本早い便だったら、三保の松原で下船して東海大学の水族館を見学する予定だった。駿河湾はめちゃくちゃ深くて魚の種類も豊富なので、水族館はかなり面白そうだ。
再び街を見に出かける。巴川製紙という会社があるのは知っていたが、清水の巴川にあったというのは初めて知った。巴川は落ち着いた情緒のある川でいい。
昔からある街だけあって、何かと風情があるのがいい。
やや日がかげってきて、お腹もこなれてきたので清水名物のもつのカレー煮込みを食べに行く。
金曜日の夕方4時過ぎだが、一席ずつ間隔をあけたカウンターは満席、奥の座敷も埋まりつつあった。清水は色んな意味で優秀な街だ。
隣のキャップ被った人は多分私より10歳ぐらい若いはずだが、雑誌FRIDAYの「某芸人がエステティシャンとパパ活不倫」という記事を食い入るように眺めながら、黙々ともつのカレー煮込みとねぎまを焼酎の緑茶割りで流し込んでいた。サラリーマン風のおじさんたちも静かに飲んでいる。金曜日の4時過ぎだけど、彼らはどういう仕事をしているのか少し気になった*2。
この赤串と白串というのがレアらしく、すぐに売り切れてしまうという。優しいおかみさんが「なぜかみんなもつのカレー煮込みの黄色と、赤串と白串の3色で注文するのよね、オホホ」と言っていた。どの店でもお母さんが優しくしてくれるから、いい街だ。
清水は何かとエモい。
商店街の中の踏切も妙にエモい。狭い路地を抜けると人しか通れない踏切があって、その先が海に向かって開けているというのがなんかいい。
踏切から見る、巴川を渡る鉄橋もエモい。
そして清水出身の私のウイスキーの師匠のお父さんの同級生が先代の大将をしている新生丸さんへ。先代の大将は由比でサクラエビの漁師をされていたそうだ。今は息子さんが店を取り仕切っているが、先代も今でもカウンターで刺身を引いている。
一人なので予約しなくても入れるだろう、と思って油断していたが、6時前で完全に満席でがっくりしていたら、ここでも優しい女将さんがカウンターに椅子を一つ入れて無理やり席を作ってくれ、周りのお客さんも嫌な顔せず迎え入れてくれた。
あまりに美味しそうなのですぐにがっついてしまい写真を撮り忘れたが、サクラエビのかき揚げが甘くてクリスピーで天つゆにもあって、おかわりしたくなるぐらい最高だった。
あと自家製のはんぺんを揚げた香ばしい香りだけで生中1杯ぐらい飲めそうだった。
新生丸では素敵な大将と女将さんと、娘さんと思しき高校生ぐらいのかわいらしい女の子二人と先代が、忙しいのにニコニコしながら切り盛りしていて、地元の人たちもみんな楽しそうに飲み食いしていて、一人飲みでよそから来た私も楽しい気分のお裾分けをいただいた。
美味しい魚だけでお腹一杯になるという贅沢をしたあとは、生まれて初めての静鉄に乗って新静岡へ。
新清水から新静岡までは20分くらい。言うまでもないが、清水はもともと清水市で、静岡市清水区ではなかった。清水と静岡は端から見てもカラーが大分違う気がする。
静岡のバーは老舗を含めていくつか行ったが、私が好きなのはこの店。
東京で言うと銀座のゼニスさんのような、本格的なカクテルとウイスキーの両方が楽しめる、カウンターのみのバーだ。
前回お邪魔した時は、エージェンシーとスリーリバーズのダブルネームの89リトルミル2011を飲ませていただいて、とても良かった記憶があった。
スターターは何にするのか少し悩み、95BBRのグレンエルギン21年を久々にいただく。静かで力強い、美しいバーボン樽熟成のグレンエルギンだ。
背の高いガリアーノのボトルが見えたので、やや疲れもあってゴールデンキャデラックみたいな甘めのカクテルをいただこうかと一瞬思ったが、他のお客さんのオーダーでお忙しそうだったのでハイランドパークをいただいた。
そうこうしているうちに夜も更け、お勘定をもらって静岡駅まで歩き、もう一軒ぐらい飲みに行こうかと思える時間に東京に着いた。
クルマやバイクで出かけてしまうと気づかず通り過ぎてしまうことも、経験できないこともたくさんあるのだな、と改めて気づかされ、みんなに優しくしてもらったことを思い返しながら、寝静まった街を歩いて家に帰った。
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