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コンビニの入り口で、あの時、立ち止まってくれたあなたへ。

コンビニにて。黒のワンピースを着た女性が、店を出ようとする僕とすれ違いざまに入店。

なぜか自動ドアの近くで棒立ち。視線の先はどうやら店内。不思議に思っていると、僕の車いすが自動ドアを通過した後、再び歩きだして店内へ。

ハッと気づく。ドアが閉まらないようにしてくれたことを。気を使わせないように、見てるか見てないかわからない感じで、なんともさりげなく。

スマート過ぎるユニバーサルマナーに感激した。店内に戻ってお礼を伝えようかと迷ったけど、せっかくの粋な計らいに対して、なんだか野暮な気もして、そのまま店を後にした。


何処のどなたが存じませんが、本当にありがとうございました!あなたが立ち止まってくれたあの一瞬は、僕にとってかけがえのないできごとになっています。

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車いすに乗って20数年。数え切れない不便と向き合ってきた。段差、階段、狭い道、急な坂道、様々な場面での限られた選択肢。

不便なことがある度に、「自分の足で歩けたら」と、願ってもどうにもならないことを心の底から願い続けた。けど、最近はちょっと違う。不便なことと比例するように、少し前向きになれるような、できごとが多くなった。

新幹線でのできごととかハイチュー事件とか、今までの辛いことが吹き飛ぶくらい、心温まることがたくさんあった。書き残してあるのは、これまでの感動体験の1%に満たない。それくらい、数え切れない。

昔はどんな善意もおせっかいだと思っていた。弱者として、可愛そうな存在として見られるのが嫌だった。でも、歩けない現実と向き合い、少しずつ折り合いをつけて、どうしようもないことは諦められるようにもなった。

「ありがたいなぁ」と思えることが増えたのは、社会が変わってきているとか、心のバリアフリーが進んでいるとか、そういうことじゃ、きっとない。たくさんの思いやりや配慮に気づける、少しの余裕を、僕は30を過ぎてようやく持てるようになったのだと思う。

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