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高校入試国語 問題分析① 日比谷高校

◇高校入試の問題分析も始めます

大学入試の現代文も細々と続けていますが、かつてのメイン業務であった高校入試についても分析していきます。

とは言え、「どのような生徒が合格するのか」の嗅覚は現場を離れて久しいので、本企画では「国語の入試問題」についての分析をしていきます。

まずは、東大合格者数日本一の公立高校、日比谷高校からはじめていきます。

◇日比谷高校の国語についてのデータ

〇試験全体についてのデータ

詳細はこちらへ。

2022年度の入試において男女合計の「実質倍率」(当日に受験した人数から計算した倍率)が1.72培である。

公立入試においては高い部類である
それ以前に「内申点による(事実上の)足切り」があることを考えると倍率はさらに高いのかもしれないが。(オール4では合格しないとは言わないが、併願パターンの組み方次第では回避が有力な選択肢になるだろう。)

〇科目別のデータ

日比谷高校は3科目(英数国)は自校作成問題である。つまり、日比谷高校受験生向けに作られているので難しい。

この平均点推移(2019→2020→2021→2022)がこちらだ。

【英語】
男 60.4→60.6→62.0→65.3  
女 59.3→63.2→59.3→65.6
【数学】
男 55.5→50.4→68.2→64.6  
女 47.3→46.1→59.7→64.0
【国語】
男 53.2→50.5→64.3→69.8  
女 53.9→53.4→63.8→71.9

私は2020年度入試の生徒までは関わっていたのでそれ以降は数字上の感想だが、各科目少し問題がマイルドになったような気がしてならない

倍率から考えるとこの平均点が実質的に合格点なのだが、65%から70%に収まっていることはよく言えば問題の作りが良いとも思えるし、少し日比谷らしい尖った問題が減ったともいえるのかもしれない。

ちなみに理社だが、社会は毎年80点前後で、理科は2022年は90点を越えているが、80~85点のレンジに入る。都立の理社(=簡単)とはいえ、それを取り切る(=満点)は難しいのだ

◇国語の問題分析(総論)

① 問題量が多い

私も中学受験、高校受験指導からキャリアを始め、そこから大学受験指導を行っているが、日比谷高校ほど国語の問題分量が多い問題は見たことがない
50分で大問5つ(うち漢字で2つ)、2022年から記述問題が1題になったが、それ以前は50~70字の記述が評論・小説のそれぞれにあったことを踏まえると異常な量だったと言える

試験として適正な量とは思えないが、これは仕方がない。みな同じ条件で解いているので諦めて受け容れよう。

② 「正解率」を高めよう

そのうえで、私が指導していたころは「解ききれなくても解いた問題が正解していれば合格できる」、と担当生徒には伝えていた。
とは言え多くの生徒がなんとか解ききって帰ってくるわけだが、受験者平均(=合格ライン)が60%前後の問題であれば、「正解すべきところを正解すれば合格できる」テストである。つまり、1問1問の正解率を高めることを意識すべきなのだ。
焦りすぎずに少し空欄があっても…という認識で受験すべきであろう。

実際に計算してみると、例えば250字記述が0点(時間不足で書けず)として、88点が最高点になる。

そのうち、漢字を16/20点取るとすると、68点中44点取れば漢字とあわせて60点である。得点率で言えば65%程度である。

しっかりと力をつけていれば問題なく取れるレベルだと個人的には思う

◇国語の問題分析(各論)

〇大問1・2 : 漢字

毎年「まあまあ」難しい。

(例)
2021年入試 
【読】 賛仰(さんぎょう) 
【書】 カンシン(=寒心)
2022年入試 
【読】 陶冶(とうや)   
【書】 トクシン(=得心)

しかし、一般的な漢字練習帳の「難しい」の範囲に載っているものを越えてはいない

<得点目標> 
16/20点(2点/問 ・ 8/10問正解)
<所要時間> 
2分

〇大問3 小説

<出典>
2021 『スター』 朝井リョウ
2022 『アスリーツ』 あさのあつこ

以前から日比谷は宮下奈都など「最近の」作家の作品からの出題が多い
これは大学入学共通テスト、センター試験が「時代設定が古い」「高校生が感情移入がしにくいキャラクター」の文章を好むのと対照的であると言える。個人的には非常に興味深い。

小説問題についてポイントは2つである。

① 設問分析

基本的に日比谷の小説問題は(記述問題も含めて)3つのタイプからなる

⑴ 心情問題
→ 登場人物の心情を考える問題。
「心情そのもの」と「原因となる出来事」を考える。

⑵ 表現の意図
→ 傍線部のような表現を筆者が採用した意図を考える問題。
「傍線部の表現」がストーリー上どのような意味があるかを考える。

⑶ 内容一致
→ 本文内容と照らし合わせて考える問題。
消去法的に見ていって良い問題。

この中で⑵が一番難しい問題であると言える。
上記アドバイス(簡単だが)を参考にして「どのように解くべきか」を考えていこう。

② 評論との分量差から考える時間配分

先述の通り、日比谷高校の国語の一番難しい点は「分量の多さ」である。よって、時間配分を考える必要があるのだが、2021年以前の記述ありのものでも18分程度、2022年に関しては15分ぐらいで解き終える必要がある。

これは評論問題には「最低22分」(できれば30分弱)残す必要があることに起因する。

「小説にはあまり時間がかけられない」ことに注意すべきであろう。

〇大問4 評論

<出典>
2021 『若い読者に贈る美しい生物学講義』 更科功
2022 『文明の死/文化の再生』 村上陽一郎

2021年の更科功の文章は2021年の愛知工業大学で、
2022年の村上陽一郎の文章は2009年の関東学院大学で同一出典である。
出典の文章、筆者共に大学入試とレベルの文章が出題されている。

評論のポイントは以下の3点だ。

⑴設問条件の確認=答えるものの確認
→日比谷の問題は細かい条件の設定がなされていることが多い。つまり、「傍線部近くをなんとなく」処理しているだけではダメなのだ。常に「何が問われているのか」を意識して解答する習慣をつけておこう。


⑵論理構造(論と例の対応)
日比谷は特に「論と例」の対応を出題する。2021年は図表(=例示の一種)の意図を問うてきたが、これは例に対応する論を探す、という作業でまかなえるものである。
文章を読むときに論理構造を意識しているかどうかは大学受験の現代文読解においても非常に重要な観点である。


⑶250字記述について
→都立高校最大の特徴と言えるこの問題だが、2021年以前の日比谷のテーマはとにかく難しかった。
「戦略」としては「最後に解く」「とりあえず思ったことを書きつける」ぐらいしか出来ないほどの全体分量だったので、時間があれば真剣に考える、程度の位置づけでしかなかった。
しかし、2022年はそもそもの記述分量が減り(小説では出題無し)、また250字記述において極めて詳細な条件が付されていたので、その通りに解けば得点しやすいものになっていた。平均点の上昇はこのあたりに要因があるだろう。

〇大問5 韻文融合

日比谷は古文ではなく「韻文+鑑賞文」の形式で最終問題を出してくる。
問題形式そのものは日比谷独特なので過去問を解くことで慣れて欲しいのだが、設問は「鑑賞文の読解」「韻文の読解」と分けることが出来るので、「どの文章を使って問題を解くのか」を意識すればそれで良い。

今回は以上です。
次回はどこかの都道府県入試の分析を予定しております。

それでは。

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