雨しか降っていなかったから
ここのとこ、しばらく雨が降りつづいていてね、僕だって少しくらいは、まいってしまっていたんだ。あんまりそんなことなんて、気にしてない風にみられるけど、たまにそういったこともあるんだ。
それで、部屋にいても仕方なく思えてきて、だって、窓のそとをみても雨がふっているだけで、たまに覗きにくるはずの猫のフィガロもまったく遊びにこないしね。だから、仕方なく外にでることにしたんだ。まあ、仕方なくなんだけどね。
とりあえず、どこにいこうというのも決めずに、でてしまったから、歩いていてもうまく歩幅がさだまらなかった。こういうことって、わりとある方かもしれないね。ついつい、あっちとこっちとを行ったりきたりしていたんだ。いつもそう、なにかこれということを決めていないとダメなんだ。
目についたカフェがあったから、そこにひとまず入ることにして、そこで、エスプレッソでも一杯、かるく飲もうという気になったんだ。そこのカフェには、何度か入ったことがあるけど、はじめて入ったみたいにして、カウンターにいる男性に注文をしたんだ。
きちんとそれなりに、挨拶をしてね。
そのあと、カウンターからテーブル席にうつって、エスプレッソをのんでいたんだ。カップの中は、ほとんどもうからに近かったけど、しばらくそこに座って、外を眺めていた。あいかわらず雨がふっていて、その中をときどき、人が歩いていくのがみえた。そういうのがみえるだけで、部屋にいるよりかは、少しはましだよね。
そんなふうにしていたら、となりの席の男女がパズルをはじめたんだ。
雨もふっていたし、それに日曜日のそんな時間になんて、これといってやることってないよね。僕だってそうだったし。そういう時にやっぱり、パズルとかそういうのってとてもいいかもしれないな、と思ったよ。よけいなこともあまり考えずにすむからね。
ただ、ひとつ問題があることに気がついたんだ。
そのパズルを完成させるには、すこしばかりテーブルが小さそうだったんだ。
真ん中の方からはじめていたからね、そのことにはまだ男女は気が付いていなそうだったよ。あるいは、気が付いていたかもしれないけどね。まあ、そんなことを気にしていたのは僕だけだったよね。
男女はそれぞれが手に持ったパズルを、あった、とか、ここだ、とかいいあって、少しづつ形を大きくさせていたよ。あった、とか、ここだ、ってね。
それをみているうちに、あまりそれに興味がなくなってきてね、とういうか、つまりみているのに飽きてきてね。まあ、仕方ないよね。あれこれ、考えていたのはぼくじゃあなくて、その男女の方なんだし、あまり、そういうのをみていてもね。
それで、2ユーロを席においてカフェからでたんだ。
雨はまだまだ降っていたけどね。
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