フォレストイン益子 内藤廣

内藤廣「技術の翻訳」「場所の翻訳」「時間の翻訳」の観点から感想、考察

〇技術の翻訳
・プレファブトラスは、構造の合理性と生産の合理性を備えており、直観的に感銘を与えるデザインとなっている。
・トラスの裏側に見える屋根(天井)をガラスにすることで、トラスの繊細さがより浮き上がりトラスの構造美をより強調している。
・一方で、トラスは単純に形として美しいという視覚優位性以上の意味はなく、使用者の行為に関与する可能性は多分あまりない。

〇場所の翻訳
・ 内藤廣は、20世紀の場所と無関係にその場所の自然をコントロールして成り立つ建築に対して、土地に同調して建築を作る姿勢が重要だと言っている。例として、東京の山手線は、縄文海進の地形にそって建てられているという事例を出しており、場所と無関係に自然をコントロールしようとして作られた鉄道においても、自然の要素とは切れない関係にあることをあげている。これを内藤廣は、「場所の声を聴き、的確な「場所の翻訳」」という主観的な言い方をしているので、「場所の翻訳」という言い方自体は理解できるがその解釈は読み手によって変わってくるので正確性にかける言い方ではないか。
・これを元にフォレストイン益子では、内藤廣は地形をできるだけ生かして設計を行っていると思われる。この建物と環境との関係は、詳しくないが土木の形を決める論理と近似なのではないか。それが内藤廣の目指す「祖形」に近いものになっているのではないか。

〇時間の翻訳
・ 建物の竣工からほぼ四半世紀が経過し、外部のウレタン塗装は耐用年数を過ぎてはげかけている。対照的に雑草類は毎年生え変わるのでむしろ建築より新鮮な状態にある。そして、地形はほぼ四半世紀前から変わらない。
・内藤廣は建築は時間の中でのオーダーが違う物質同士を組み合わせていくものと言っている。この観点から外観を見ると、時間のオーダーは、長い順に、地形、後方の樹木、建築、新しい雑草類となっており建築の持っている時間のオーダーが周辺の時間のオーダー中に取り込まれた状態となっている。
・建築内部では、スチールトラス周辺のLVLや他の仕上材が色褪せて、トラスの持っている時間のオーダーとズレが生まれ、さらにそこに太陽光という最も新鮮で新しものが入ってくるという少なくとも3つの異なる時間のオーダーを人間が体験する空間になっている。
・ただ、これも建物を「見る」という点で、時間を体験するものであり、もちろん従業員はそこで活動をしているが、いてもいなくても時間の感じ方は変わらないので生きた空間かというとそうはなってはいないという印象。


外観
トラスと光とLVL


いろあせが遅いトラス、色あせが早いLVL、建物と無関係に行動する人

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