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消費税にまつわるアレやコレや

消費税というのは、
選挙のときなどに大きく注目を集めるイシューですよね。
社会保障費に使われているとか、いないとか、
将来的に増税すべきとか、すべきでないとか、
様々な論点がありますが、今日はこの消費税について
まとめて掘り下げてみようと思います。

まずはじめに「そもそも税金とは?」から始めましょう。
そもそもですね、税金というものは
「何らかの行動にかかっている」わけですよね。

例えば所得税は所得を得たことにかかる税金です。
入湯税は温泉に入ることでかかる税金。
相続税は財産を相続したことにかかる税金。

そんな具合です。

では、消費税は何にかかっている税金か、というと、
「お金を使う」という行動にかかる税金ですね。
たとえばガソリンの価格には、
すでにガソリン税という税金がかかっています。
そしてそのガソリン税も含んだガソリンを買うときに、
さらに消費税がかかるわけですね。税金に税金がかかっている。

おかしな話だと思います。

そして、ここが重要ですが、税金の機能のひとつが
「行動の抑制」なんですね。
タバコ税はタバコを吸わせないようにする効果があるし、
炭素税にはCO2の排出を抑制させる効果がある。
関税は過剰な輸入量を抑制する効果がある。
そのために税金をかけるわけです。

では消費税にはどんな効果があるか、といえば、
お金を使うことを抑制させる、という効果ですね。

これはまちがいのないことです。
日本が30年間も経済成長せず、デフレ傾向でありつづけた原因のうち
少なくとも大きな役割を果たしたのは、まちがいなく消費税です。

これが消費税のひとつの側面です。

さて次に、
消費税は、元々は直間比率の是正のために導入されたもので、
社会保障費のためではない、という話があります。

多くの人が、少子高齢化に備えて消費税は必要だと考えています。
政府も「消費税は将来の社会保障のために必要な財源だ」
という理由のもとに何度も消費税率を上げてきましたよね。

しかし、実際のところどんどん上げられてきた消費税収は
所得税や法人税という「直接税」を減税するために
その穴埋めとして使われてきただけで、社会保障には
ほんの一部しか使われていないことが明らかになっています。

つまり「社会保障のために必要」という部分にウソがある。

でも、そもそも1989年に消費税が初めて導入された段階では
社会保障にの財源にするため、などという議論はなくて、
単に「直間比率の是正」という目的しかなかったのです。

直間比率というのは直接税と間接税の割合という意味です。

消費税導入前にも「物品税」という税金があって、
これはいわゆる「贅沢品」にかけられる税金で、間接税でした。
そして直接税というのは所得税や法人税などのように、
納税者が国に直接収める税金のことですね。

消費税導入以前は、所得税や法人税の累進性が非常に高く、
税収に占める割合も大きかったのです。
その直接税の税率を下げるために、贅沢品だけにかかる物品税ではなく、
誰が何を買うときにもかかる消費税に領域を広げたわけですから、
消費税収が所得税・法人税の減税の穴埋めに使われることは
当たり前なのです。

単に、社会保障費につかうため、という理由がウソなのです。

しかし、それに加えてもう一回り大きなウソが存在します。
実は消費税の実態は間接税でさえなかった、というウソです。

直接税と間接税のちがいは、
税金を払う人と実際に国に税金を収める人が
同じ人か、ちがう人か、というものです。
所得税は所得を得た人が直接、納税する税金です。
だから直接税。
消費税は税金を払うのは消費者で、納税するのは事業者です。
だから間接税。

そう思われていたのですが、実は法律的には、
消費税は税金を払う人と納税者を分けておらず、どちらも事業者なのです。

この意味がわかりますか?

100円の品物があったとします。
今、消費税法でこの品物には10%の消費税がかかるということにします。
すると、この商品の値段は110円になりますね?

あなたはこの品物を110円で買います。
お店は商品代金である100円の他に、
税金として10円をあなたから一時的に預かり、
その後、その10円をあなたに代わって消費税として国に納めます。
そう思っていますよね?

しかし消費税法は、その消費税である10円分を、
品物を売った事業者に対して納税せよと規定しているだけであって、
税金を払うのも、納税するのも、あくまでも事業者です。

ここちょっと微妙でわかりにくいのですが、大丈夫でしょうか?

100円のものに消費税が10円かかるときに、
価格を110円にすることを「価格転嫁」と言いますが、
消費税は確かに価格転嫁をして
最終的にそのお金を消費者から徴収しようとしています。
しかし、ここで重要なのは「価格」と言っていることなんです。

消費税で110円になった商品は、100円の商品代プラス10円の税金ではなく、
あくまでも110円という価格の商品なのです。

図示しますと、
●●●●●●●●●●+○  ではなくて、
●●●●●●●●●●●   なのです。

ちょっと汚い口調で表現すると、消費税は、事業者に対して
「商品の価格をお前が10%上げて、
 消費税相当分のお金をお前が消費者から取って、お前が納税せよ」と
言っているのです。
消費者から税金を一時的に預かっているのではないのですよ。
そうではなくあらかじめ値上げして得た「事業者の稼ぎ」から
商品価格の1/11相当を納税するものなのです。
だからこそ小規模事業者に対する免税措置というものが存在できたのです。

私たち消費者が支払う金額は同じですが、意味がちがうのです。
ややこしいのでちょっとしつこく説明します。

●●●●●●●●●●+○  ではなくて、
●●●●●●●●●●    を
●●●●●●●●●●●   に値上げした上で、
そのうちの●をひとつ、○として納税せよと事業者に言っている。

消費税は、事業者に対して、ものを売ったときに、
その金額の10%を納税しろと規定する「直接税」なのです。
その分のお金は事業者が消費者から取れとはいいますが、
その方法は「価格を上げることによって取れ」と言っている。
「価格とは別に税金分も取れ」ではなく、です。

こうなると、つまり消費税とは、
活発な経済活動の結果としてではなく、
国が決めた仕組みによって無理やり起こした
単なる「値上げ」であり、「物価上昇」に過ぎないということです。

だから、消費増税でGDPが増えるのです。
消費税分、やりとりされた金額が増えますからね。

けれどこの値上げは賃金上昇には絶対につながりません。
だって誰の儲けにもなっていないんですからね。
消費税は、物価があがるけど賃金が上がらないという現象、
スタグフレーション発生装置なのです。

なぜならその価格上昇分の金額は政府によって
「中抜き」されているだけでなく、
その後にその「中抜き」されたお金は、
存在ごと消されてしまっているだけだからです。

これは「スペンディング・ファースト」を理解していないと
ちょっと難しいかも、ですが、前回のブログでも書いたとおり、
国家予算というのは元々税収で執行しているのではないのです。

そうではなく、先に(国債発行で)無からお金を作り、
それを使ってしまってから、後から税金で回収しているのです。
先に使ってしまっているのですから、
国の収支は最初からマイナスなのであって、
徴税で回収したお金はそのマイナスを減らす効果しかなく、
つまり集めたそばから消えていくというわけです。

ですから、消費税というのは、私たちが何か経済活動をするたびに
世の中からお金を消していくという機能を果たしているのですね。

このように少なくとも現行の日本の消費税は
何から何まで問題だらけなのですが、利用価値はあります。

どうすればいいか。
実は今日はこれを提案したいんですね。

消費税は相対的にみると、もともと不公平な税制であると言えます。
収入全体のパイが小さい人にとっては
消費税率が上がると相対的に可処分所得が減ってしまうからです。

しかし絶対的に見れば、
高所得者の方が高額の消費税を納めているのも事実です。
同じように生活していても、お金持ちの人々は
買うものの一つ一つの値段が高いでしょう。
総所得の中での消費税が占める割合は低いでしょうが、
消費税による絶対的な納税額そのものは低所得者より高額です。

絶対値で見るか、相対値で見るかによって消費税の評価は変わるのです。

そこで思うのです。
今の株主資本主義の日本では、
企業が賃上げをするというのはシステム的に難しい。
それならそのぶんを国が賃上げしてあげればいいのです。

消費税は商品価格のうち、
事業者の手をスルーして国に戻るお金だと考えられますよね。
消費税がなければ、そもそもそのお金は事業者の利益になって、
労働者の賃金にはならずに資本家に吸い取られてしまうことを考えたなら、
消費税は、お金を富裕層から守っていると言い換えることもできるのです。

で、あるならば、
その消費税収分のお金をすべて国民に均等に給付してはどうでしょうか。
高額納税者も低額納税者も、みなに均等に戻します。
そうすると、たくさん消費税を納めた人はトータルでは少なく、
消費税負担が低かった人には多く戻ってくることになります。

つまり、消費税を、国民による富の再分配装置として機能させるのです。
そうすると、これは平均収入のアップにつながるはずであって、
少なくとも今よりも実体経済を元気にする効果があると思うんですね。

社会での物価高騰は、本来は賃上げにまわるはずだったお金なのですから、
もういちど国民の手に戻すのは、
それほどおかしなことではないと思います。

消費税の機能が、富の再分配であり、
企業ではなく国家による賃上げだとしたら、
みんなの印象が変わりませんかね。

政治家の方、是非、このアイデア、ご検討ください。

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