徒然愚さ 八歩目

窓外は雨。
駐輪場のアーケードがドラムロールを鳴らしてる。

唐突に祖父宅の夏休みを思い出す。
祖父宅に預けられた小学校低学年の僕は、こんな日には退屈して外を眺めていたなぁ。
あの頃ドラムロールを響かせていたのは車庫のアーケードだった。

彼に会えなくなってから、かれこれ8年が経とうとしている。
彼は家族の中で僕を最も愛してくれていた一人であるし、僕も彼が大好きだった。
会えなくなって寂しいと思うことはあるが、しかし、そのことで心臓を掴まれることはない。

恐らく、僕は彼との時間に悔いがないのだ。
死に目には会えなかった。
しかし、前日になんとなぁく彼の病室を訪れて、何時も通りの他愛ない話を一通りして、またねって帰ってきていた。
なんとなく、それが最後な気がして、覚悟して会いに行った。

話は変わるが、僕には心臓を掴まれるような記憶がある。
どう足掻いても帰ることができない過去の日の過ち。
悔やんでも仕方の無いことだとは解っている。

幸せな時間を失うと寂しいが、圧倒的な力の前に為す術無く奪われるのならば後悔はしないだろう。
それこそ、寿命や運命ならば。
しかし、自らの手で破壊してしまったと気付いたとき、
四肢に枷が、心臓に杭が打たれる。
自縛されるんだ。心がそこに拘ってしまう。

星守る犬とは、星を見守る犬、即ち手に入らないものを欲し、眺め続ける人間を指す言葉らしい。

人は高望みをする。
地位、名誉、富、成功、愛…。
でも、これらはもしかしたら手に入るかもしれない。
世の中で本当に手に入らないものは、過去を変える力だと思う。

僕は正に星守る犬なんだろうな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?