徒然愚さ 十一歩目

師走が好きだ。
研ぎ澄まされたような冷たい空気、浮き足立った街並み、そこを行く慌ただしい人々、通りを外れた静かな星空。

一呼吸おいて眺めるだけで、愛おしいものに溢れている。

今年を振り返って思うことは
今年は振り返ってばかりだったということ。

「今」が味気なくて、「未来」に不安が多いと、「過去」に救いを求めてしまうようで。
思い出に囚われて、やるせなさをウイスキーに溶かす夜を何度も過ごした。

しかし、悪いことばかりでもなかった。
過去を眺め飽きると、まだ今があることに気付いた。
溢したものも多いけれど、まだ手の届くところに大切なものがあった。
夏には家族や友人に暑中見舞いを出した。
去年より多くの年賀状を買った。
手を伸ばし続けること、リボンを結び続けること、それができること。

親友と会う約束をしていたが、なくなっちゃった。
コロナの馬鹿野郎って思っちゃったけど、
コロナは、日常が当然のものではないっていう至極当たり前の現実を、私達に教えてくれたのだ。
会えなくなったから、年賀状でも出そうかな、手紙に一寸した贈り物でも添えようかな。

師走が好きだ。
石油ストーブと畳のにおい、帰路に漂う夕飯とお風呂の香り、クリスマス。
大切な思い出が、イルミネーションみたいに点いては消えて、大切な今を幽かに照らす。

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