第十三話
朝帰りにマキが怒鳴ったように、もぅーなにやってんだよー。こんなビックチャンスはないんだから・・・。
あの一流カリスマブランドの『アルシュエティー』から、パリコレの舞台音楽を作ってくれとオファーがあったのよ。何でも御曹司の“松村誠治”が手を上げて押して下さったそうよ。早くこれに着替えて。さあ、午後十二時半から、品川グランソワールホテルでの記者会見でヒートも関係者の一員として正式に発表されるのだから。おいおい俺はまだ承諾した訳じゃないんだぞ！！
何迷うことないじゃないでしょうが。マキとにかく電話させてくれよ。プルルル・・もしもしアルシュエティーの取り締まり代表の松村誠治様にお取次ぎしてくださいませんでしょうか。こちらは、パリコレの舞台音楽を頼まれたヒートと申します。受付嬢から、しょうしょうお待ちを。
保留音がこんなに長く感じた事はなかった。そして、松村氏が出た。いやぁーヒート君だね。突然でびっくりするのも当たり前だ。とにかく記者会見に来てくれよ。話は記者会見が終わったらゆっくり話そうじゃないかね。それでは、遅れないようにね。ブーブー。その時まだ僕は何も知らずにいた。