On My Load第10話

第十話
午後十時三十分、やっと最終テイクをトラックダウンし終え、僕は着の身着のままポケットにMDプレイヤーを忍ばせ大急ぎでチャリンコをこぎながら何故僕はこうまでして走っているのだろうか。
同情それとも愛情から・・・
もしかしたらデジャブで前に逢った記憶がそうさせるのか、、、。やっと目的の公園の入り口まで五分前に着いた。彼女はベンチに横たわったまま蹲り小刻みに震えていた。彼女の肩にそっと手を回すと彼女は小さな声を振絞りながら【ありがとう】と言うと僕の手をぎゅうとにぎったまま少しこのままでいてとぽつり発した。うっすら彼女の目頭から透明なしずくがつーと流れおちていた。二・三時間たったのだろうか、彼女が落ち着いてきたので僕は、回りくどい言葉よりも作曲家なので、今の君を助ける曲だよとMDのヘッドホンを片方ずつお互いの耳につけて再生ボタンを押す。見詰め合う二人の間に曲の奏でるリズムがお互いの魂を揺さぶりながら共鳴しあっていく。暗闇の公園のなかで、二人だけがメラメラと熱いオーラを発していた。心の真まで一つになった気がした。

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