第27節ファジアーノ岡山VS大宮アルディージャ"連敗脱出と再浮上への布石"


4連勝からの3連敗。チームにとってはもちろんサポーターにとってもショックは大きいだろう。しかし、4連勝から得たものをすべて失ったわけではなかった。


試合結果

岡山 0-1 大宮

【得点】

64分 大前元紀



スタメン

 DFラインには今季の定番と言っていい4人を並べ、ボランチは喜山康平と関戸健二の組み合わせ。サイドにはボランチで出場し続けていた上田康太が右に、左は久保田和音が務めた。2トップは個人で打開できるイ・ヨンジェと仲間隼斗を起用した。

 対する大宮は、名古屋から期限付き移籍で加入した櫛引一紀を3バックの一角に据え、ドリブル突破が得意なイッペイシノズカ、奥抜侃志、茨田陽生の前に”ハイタワー”シモビッチが虎視眈々とゴールを狙う。攻撃力はかなり高い印象だ。


ハイライト


マッチレビュー


警戒レベルが高かったシモビッチ対策

 199㎝の高さを誇るシモビッチはJ1,J2通算34ゴールをマークしているストライカーで抑えるのは難しいだろう。高さで勝負すると仮定すると190㎝の増田繁人をスタメンで起用すると予想したが、白羽の矢が立ったのはチェ・ジョンウォンだった。この韓国人センターバックは左利きであり、プレス耐性が高い。今シーズンは1試合を除くすべての試合にフルタイム出場をしていて、監督の信頼と経験を得ていた。この起用から、有馬監督はDFラインからボールを繋ぎたいという考えを再認識した。
 マンツーマンでシモビッチを抑えるというのは容易ではない。ここで岡山が採用した方法は、ジョンウォンが体をぶつけ、シモビッチと競り合う。そして、危険なスペースを埋める能力に長けた喜山がこぼれ球を拾ったり、カバーをした。ジョンウォンと喜山で挟み込むことでシモビッチの動きを制限した。しかし、シモビッチにヘディングシュートを打たれる場面もあったが、GK一森純のファインセーブで得点を許さなかった。猛威を振るうであろうセットプレーも含め、得点を許さなかったのでシモビッチへの対策は合格点を与えたい。
 チェ・ジョンウォンはこれまでリーグ戦での出場がなかった。経験のあるDF田中裕介とコンビを組んで出場を重ねることで、まだまだ粗削りだが成長を感じた。

”右サイドハーフ上田康太”の真意を考える

 中盤の底から長短のパスを織り交ぜ、岡山の司令塔としてプレーしてきたMF上田康太がこの試合、右サイドハーフで起用された。なぜ、いつも通りボランチでなかったのか。この狙いを考えていきたい。
 1つ目の狙いは、上田がボランチで出場すると大宮とのフォーメーションの嚙み合わせによって、上田へのマークがより一層厳しくなることを避けたいというものだろう。岡山のボランチの位置は大宮の2シャドーと2ボランチの間になる。プレスが厳しくなるので、パスの出し手となる上田が囲まれボールをロストすると大きなピンチになりかねない。
 2つ目は、上田は左利きで内側に視野を取りながらボールを持ち、中央へ入ってくるor2トップへ斜めにパスを差し込むプレーが期待できる。斜めにパスが入るとDFはボールとマーカーを同一視野に入れることが難しくなり、効果的なプレーである。
 しかし、逆サイドの久保田に同じことが言えることだがあまり効果的に機能しなかったという印象だった。前述した通り、サイドには張らず中央寄りにポジションを取るのでサイドのスペースが空く。そこをSBが使ってほしかったのだが、追い越す動きが少なかった。上田や久保田がドリブルで押し上げるプレーをあまりやらないタイプなので2トップにパスをつけることでしか相手ゴールに近い位置に入り込めなかった。そこで、うしろから追い越す動きが必要になるのだがそれがあまり見られなかった。
 停滞している攻撃をどうにか打破しようと試みた起用だったのだろうが、うまく機能したとは言えなかった。


新ルールがもたらしたハイレベルな心理戦

 64分、ゴール前中央でのフリーキック。直前に交代でピッチに入った大前元紀がゴールネットを揺らした。この得点は8月から施行された新ルールによって生まれたのではないかと考える。その新ルールは以下の通りだ。

 守備側チームが 3 人以上から成る“壁”を作った場合、攻撃側チームの競技者は少なくても 1m 以上“壁”から離れなければならない ‐ 1m 以内に侵入したならば間接フリーキックが守備側チームに与えられる(第 13 条)                            引用元 JFA

 岡山は壁を5枚並べ、大宮はその1m前に4枚並べた。GK一森からはボールが見えない状況が作られた。大前のような優れたキッカーが壁の上を越えるボールを枠に飛ばすとGKにとって防ぐのは難しい。ましてや、GKからはボールが見えないのである。少しでも速く動き出さないとノーチャンスなので、一森は大前が蹴るほんの少し前に重心を壁の方向へかけた。しかし、大前は蹴る方向を瞬時に壁のない方向に変え、ゴールに沈めた。大前がハイレベルな駆け引きを制したのである。一森はファインセーブを連発していただけに悔しい失点となった。


連敗脱出と再浮上へのきっかけ

 3連敗をしてしまい、選手、チームだけでなくサポーターにとってもショックは大きいだろう。しかし、得たものや良い部分もあった。しかし改善したほうが良いのではないかと思うところがあるのは確かである。改善点として挙げたいのは、ビルドアップとボールを奪った後である。
 今採用しているビルドアップの方法は、CBがペナルティエリアの幅に広がりパスを繋ぎ、GKを混ぜた3枚で相手の前プレスをかわすというものだ。横や後ろへのパスは多くみられるが、縦に付けるパスが少ない。解決法として、ボランチの一角、この試合では喜山がCBの間に落ちて、パス回しに参加する方法を推奨したい。そうすれば、後ろはCBとボランチの3枚で安定したパス回しができ、縦や斜め前にパスを出す機会も増える。また。試合途中に監督が指示を出しているSBに高い位置を取らせるということも可能になる。SBが高い位置を取ることができれば、攻撃にバリエーションや厚みが生まれる。単調になりつつある攻撃が活性化されるのではないか。
 次は、ボールを奪った後の後ろから押し上げが足りないことだ。中盤でボールを奪うと、2トップにパスを出しカウンターのような形になるのだが、2人だけで攻撃を完結させられなくなっている。シーズン序盤から、ヨンジェと仲間の2人が質的優位をつくり得点を決めてきた、相手からのマークが非常に厳しくなっている。2人がパスを出すコースがなくなり、囲まれシュートまでもっていけない。後ろからスプリントをかける選手が増え、数的同数または数的優位をカウンター時に作ることができれば、得点機会がもっと増えると思う。
 そんな中、松本からアタッカーの山本大貴、琉球からセンターバックの増谷幸祐を獲得した。天皇杯川崎戦で活躍した、武田拓真や西村恭史らがリーグ戦に絡むとまた違った岡山が見れるかもしれない。次節の新潟戦でどのメンバーが出場するのか、どのような戦い方をするのか。新加入選手と若手を含めた熾烈を極めるスタメン争いがさらにファジアーノ岡山を上のステップに上げることは間違いない。連敗から脱出し、プレーオフ圏内に再び浮上すること期待したい。

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