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ビーチ・ハウス『7』

 2年ぶり7作目のアルバム『7』も、やはりドリームポップな作品であった。それと同時に盛り上がりを魅せるインディ・ポップ、ロックのこれからの可能性を見出したような、シーンにとっても、ビーチ・ハウスにとっても、重要な1枚になる。そんな青写真を描くアルバムであった。
 Sub Pop, Bella Union からリリースからのリリースとなった今作。電子音楽、実験音楽の第一人者ソニック・ブームや、ツアー・ドラマー でテニスのメンバーでもあるジェームズ・バローネも参加している。パイプオルガンやストリングスを導入し、クラシカルでアンビエントな音作りが厳粛な雰囲気を演出し、それと相まみえる生音のダイナミックなドラム、彩りを加える浮遊感たっぷりのシューゲイザーギター、彼女らの代名詞であるメランコリックなヴォーカルとがうまい具合に絡み合う。それは、重力や時間が無に感じられるほどに濃密だ。情報量の多いサウンドデザインであるが、緻密な計算を施し、無駄な音はひとつもなくシンプルな印象をも与える。中世のクラシカル音楽と90年代シューゲイザーブーム、そして現代的な電子音楽が同居するサウンドは無二を極めたものであり、偶然の産物では決してない。音楽性の変化という選択ではなく、ドリームポップを積み上げ極めようとする姿勢が新たなる可能性を見出し、新たなる発展をもたらしたといえるだろう。こんなにも静かなる美しい世界は世界中どこを探しても見つからない。

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