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エイドリアン・アンダーヒル『CU AGAIN』

 トロントを拠点とするシンガーソングライターのエイドリアン・アンダーヒルによるデビュー・アルバム。初陣にふさわしい明るく、フレッシュなナンバーが並ぶ。「インディーロックバンドとして活動していたがキーボードとドラムマシンに魅了されソロとして活動を始めた」と本人が語るように弦楽器、ビートが主導となり、ネオソウル~オルタナR&B、ジャズを行き来しながら紡がれる楽曲の数々は気持ちいのひとことに尽きる。またアーバンでおしゃれな佇まいではあるが、そのなかにも奇をてらったような変拍子であったり、エレクトロと生音の掛け合いであったり、スパイスもしくは遊び心も見え隠れしているのも特徴といえるだろう。伸びやかで、濁りのないハイトーンヴォイスもかなり爽快でサウンドの邪魔をせず、全体に彩りを加える。
 プロデューサーはカインドネスとして活動するアダム・ベインブリッジ、キーボードにはカマシ・ワシントン、サンダーキャットらの作品に参加したブランドン・コールマン、さらにデイム・ファンクのドラマーとして活躍するキース・エディーが参加した。これだけのメンツが加わっただけあって、クオリティは申し分ないだろう。それゆえに気持ちいいだけの音楽になってしまって、とっかかりがないのも事実だ。もう少しフックが欲しかったというのは贅沢だろうか。

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