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キンブラ『PRIMAL HEART』

 キンブラといえば、未だにグラミー賞を獲得したゴティエの「Somebody That I Used to Know」でのコラボで知られるニュージーランド出身の歌姫だろうか。いや、そんなことはない。2012年の全米デビュー以降、クリエイターとしての才能を発揮させ、常に新しいサウンドの提示をし続けてきた。そんな彼女の最新作『PRIMAL HEART』も、新たな側面を垣間見せ、奇をてらったサウンドワーク(ハード)と普遍的なポップ(ソフト)が絶妙にミックスされた作品になっている。今年の音楽シーンを語るうえで欠かせない作品になったジャネール・モネイ『Dirty Computer』とも共振した内容ともいえるだろう。余談だが、両者は過去に一緒にツアーを行う予定もあったほど交流は深い。
 ゲストには、チャイルディッシュ・ガンビーノやデイヴ・ロングストレス、スクリレックスらが集まり、プロデューサーはジョン・コングルトン(クラウド・ナッシングスやエンジェル・オルセンなどを手掛けた)が担当した。
 前作から引き続き、アルバム全体で一貫されているのはエレクトロ・ポップに影響下にある90年代R&Bテイストを加えながらも、重低音が効いたビート主体のトラックメイク。しかし、民族楽器の導入やケチャやホーミーなどの融合させたエスニック・ミュージックからダンサブルなインディ・ポップ、グルーヴィでソウルフルなヴォーカルからシャウトまで挑戦した彼女自身の引き出し多さを感じさせる実験的な要素を兼ね備えた果敢な作品だ。
もはや、彼女はゴティエの名前なしでも語ることのできるひとりのアーティストであり、ポップ・アイコンとしての地位を確立した。それを声を大にして言いたくなるほど『PRIMAL HEART』は冒険心のある傑作になっている。

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