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“朝は忙しい” のは分かるけど、それでも朝食抜きを薦めない6つの理由があります

 近年、ダイエットのため、または健康のため、(あるいは単に時間がなくて)朝食を抜く人が多いようですが、果たして本当にダイエットにいいのか、本当に健康にいいのか、私は疑問を感じています。
 その疑問点、言い換えれば朝食抜きのデメリットをこれから計6点列挙してみます。
(文末に動画を貼付しています。)

朝食抜きのメリット

 はじめに、朝食を抜いた方が健康によいという考え方を簡潔に説明します。
 ナチュラルハイジーンという、100年近く前にアメリカで始まった健康と栄養に関する運動、あるいは自然療法があります。

 それによると、体にとっての1日24時間は3つの領域に分けることができ、上の図のように12時から20時までは「栄養吸収の時間」。この時間帯に含まれる昼食と夕食でしっかり栄養を補給します。

 20時から明け方4時までは「吸収と代謝の時間」。食べたものを消化して、それを材料に体(細胞)の修復を行います。

 そして、4時から12時までは「排泄の時間」となり、物を入れるよりは出す方を優先して、腸をキレイにして同時に消化器を休ませる時間帯に当てます。
 だから、朝食は抜いた方が体に優しいということになります。

 この考え方自体はきわめて理にかなっていて、何ら否定するものでもありません。とくに、免疫にも深く関わる腸内環境を重視している点は注目に値します。
 ただ、私が勉強している分子栄養学の見方では、朝食を抜くとマズイことがいろいろ起きてしまいます。

 ですから、この記事は、結論を出すとか決着をつけることを目的にはしません。それぞれの長所短所を理解した上で、自分に合うのはどちらか、判断材料にしていただきたいと思います。

タンパク質が不足するリスク

 朝食抜きを薦めない理由、1つ目はタンパク質が不足するリスクです。
 タンパク質は体の材料であり免疫細胞の材料でもありすべてに優先する栄養素です。タンパク質の1日の必要摂取量は思いのほか多く、50〜80g(体重による)です。

 タンパク質の必要摂取量を1日2食で摂るのは非常に困難です。頑張って2回でクリアするのが絶対に無理だとは言いませんが、それをすると今度はタンパク質の消化に不安が残ります。
 
 そうでなくてもタンパク質は消化に難を伴う栄養素ですので、それをドカ食いすると消化能力を超えて未消化のタンパク質が発生します。未消化タンパク質は栄養にならないだけではなくあらゆる毒素を撒き散らしながら腸の中を移動して腸内環境を悪化させます。

 1日3回しっかり食べてタンパク質の必要量を分散するのが朝食を摂るメリットです。

タンパク質が減ってしまう

 朝食抜きを薦めない理由、2つ目はタンパク質が不足するどころか体のタンパク質が減ってしまうからです。

 朝の時点で前の日の夕食からかなり時間が経過していますので、体に蓄えている糖質(ブドウ糖)はほぼゼロになっています。ここで朝食を抜くと午前の活動に支障をきたします。とくに脳はブドウ糖しかエネルギーとして使えないので一大事です。

 そこで人体は、体にあるタンパク質や脂質をブドウ糖に変換して急場をしのぎます。これを糖新生と言います。
 糖新生を繰り返すと、脂質はともかく、タンパク質がどんどん削り取られてしまいます。先ほどの例に加えて、朝食を抜くと2重の意味で体がタンパク質不足になってしまいます。

基礎代謝が悪くなる

 朝食抜きを薦めない理由、3つ目は基礎代謝が悪くなることです。
 ブドウ糖の枯渇によってタンパク質が削り取られる場合、そのほとんどが筋肉です。筋肉量が落ちると基礎代謝が下がることは知られています。

 基礎代謝とは、単に痩せる痩せないの問題ではなく、生命を維持するために必要な活動のことを言います。基礎代謝が低下すると、血流が悪くなり低体温を起こすだけではなく、低血圧、疲れやすい、肌荒れ、便秘、生理不順など、さまざまな症状を引き起こします。

太りやすくなる

 朝食抜きを薦めない理由4つ目は、太りやすくなることです。今の基礎代謝の低下がその原因の一つですが、それ以外にもあります。
 朝食を抜いて空腹マックスとなる昼食は、たぶんドカ食いになるはずです。その中には多くの糖質も含まれますので、血糖値が一気に上がります。

 さらに超空腹の午前中には血糖値の低下(低血糖)を食い止めるために、血糖値を上げるインスリン拮抗ホルモン(グルカゴンなど)が分泌されます。つまりインスリン拮抗ホルモンが頑張って血糖値を上げているさなかにドカ食いの昼食が入ってくるわけです。
 すると血糖値は輪をかけて上がります。急上昇です。

 危険を察した人体は、血糖値を下げようとして肝臓や筋肉が血中のブドウ糖を取り込みます。が、血糖値が一気に上がった場合、肝臓や筋肉の処理能力を超えてブドウ糖が余ってしまいます。

 余ったブドウ糖は脂肪細胞に取り込まれて脂肪細胞が膨らむ、即ち太ってしまうわけです。朝食抜きダイエットの結果が出にくいことが、このことからも理解できると思います。

血糖値スパイク

 朝食抜きを薦めない理由、5つ目は血糖値の急上昇が太ること以上に危険だからです。
 食後に血糖値が急上昇することを血糖値スパイクと言います。

 上のグラフの赤いラインのように、血糖値スパイクは尖った針のような形状をしています。それでもしばらくすると血糖値は元に戻るので、健康診断では異常が発見されません。

 けれども血糖値スパイクは、血管壁が高血糖によるダメージを受けて動脈硬化を引き起こします。動脈硬化が引き金になって心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、更にはがん、認知症等のリスクが高まることが知られています。

 血糖値スパイクのある人は、健康な人と比べて心血管疾患が1.9倍、がんが1.6倍、認知症は1.5倍発症することが知られています。

胆石のリスク

 朝食抜きを薦めない理由、6つ目は胆石のリスクが上がることです。

 この図のように、胆石は肝臓の下にある胆嚢で起こります。胆嚢は肝臓で作られた胆汁(脂質の消化に必要)を水分を抜いて濃縮した状態で溜めておく場所です。

 食事の際には適量が出動していきます。しかし、食事抜きの時間が長引くと、出動の機会はなく胆汁は溜まる一方、そして濃縮され続けます。その延長上にあるのが、固まって石になる胆石だということです。
 胆石も大きくなってしまうとその治療は大変ですが、それ以上に警戒しなければいけないのは、胆石は膵炎、膵臓がんの原因になることです。

まとめ

 私が朝食抜きを薦めない理由、1つ目はタンパク質が不足するリスクです。
 タンパク質の必要摂取量を1日2食で摂るのは非常に困難だからです。

  2つ目の理由は体のタンパク質が減ってしまうからです。
 枯渇したブドウ糖を補うために、体はタンパク質をブドウ糖に変換して急場をしのぐからです。これを繰り返すと、タンパク質がどんどん削り取られます。

  3つ目の理由は、筋肉量が落ちて基礎代謝が下がることです。
 基礎代謝が低下すると、低体温、低血圧、疲れやすい、肌荒れ、便秘、生理不順など、さまざまな症状を引き起こします。

 朝食抜きを薦めない理由4つ目は、太りやすくなることです。
 超空腹明けの昼食後は血糖値が一気に上がりがちです。すると余ったブドウ糖が脂肪細胞に取り込まれて太ってしまいます。

 5つ目の理由は、血糖値の急上昇が太ること以上に危険だからです。
 食後に血糖値が急上昇する血糖値スパイクは、血管壁を傷つけて動脈硬化を起こします。それが心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、更にはがん、認知症等のリスクを高めます。

 6つ目の理由は、胆石のリスクが上がることです。食事抜きの時間が長引くと、胆嚢の中で胆汁は溜まる一方で濃縮され続けます。その延長上にあるのが、固まって石になる胆石です。

 いかがでしたか。朝食抜きのデメリットは思いのほか多くあります。これらを理解のうえ、摂る摂らないの判断をしてください。
   なお、この記事の内容については動画もアップしていますので、合わせてご覧ください。


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