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母の死。永遠の片想い編。

母は死の間際、「私は風になるから」と言った。
何だその「私はお墓にいません」発言は、と思いながらも
言葉の通り受け取るバカ素直な私は
それから「千の風になって」を聴くようになり
流行りに遅れて
この歌を聴いて号泣するようになった。

私はお墓にいません!

そもそも納骨はしていないので
墓にはいないのだが、
かといって風が吹いたところで母がいるとは思っていない。

私たちは約束をした。
死の前日、
私は恐らく本能的に悟ったのだろう。
「お母さん絶対ずっとそばにいてね。約束だよ?!」
と、強い口調で泣きながら懇願した。

前々から、叔母に
「意識があるうちに話さなきゃだめよ」と言われていた。
分かっていた。時間がなかった。
でも私は中々言えなかった。

そして、母は日増しに意識が遠のいていった。
だから、あの日あの瞬間だった。
もう言わなきゃいけない。もう間に合わなくなる。
一番言わなきゃいけなかったことは
「お母さんが世界で一番大好きなんだ」
ということだった。

そして、もう一つが「お願いだから、絶対ずっとそばにいて」だった。

本当は、もう一つ聞きたかった。
最後に、一つ聞きたいことがあった。
でも怖くて聞けなかった。
「お母さん、私のことが好き?」

私は臆病だから、ワガママだから
一番じゃなきゃ嫌だから
怖くて聞くことができなかった。
でも聞けばよかった。
永遠の片思いとなってしまった。

母は、私を好きだっただろうか。
私は、それが分からない。
言葉にしなきゃ分からないことがある。
言葉にして伝えなきゃいけないことがある。

それが、母の死から学んだことだった。


お母さん、私のことを愛していたかい?
今度会えたら。
私が死んだら、今度はちゃんと聞こう。