2024ベルリン観劇記録(23)Nachtland
3月14日、Schaubühne シャウビューネでマリウス・フォン・マイエンブルクの『Nachtland』。2022年の新作でずっと観たかったもの。レパートリーシステムがありがたい。
作 Marius von Mayenburg
演出 Marius von Mayenburg
舞台美術/衣装 Nina Wetzel
映像 Sébastien Dupouey
音楽 David Riaño Molina, Nils Ostendorf
ドラマトゥルギー Maja Zade
照明 Erich Schneider
出演 Damir Avdic, Moritz Gottwald, Jenny König, Genija Rykova, Julia Schubert
110分。2022年12月3日初演。この日はJenny König(見たかった!)が病気のため、おそらくRuth Rosenfeldが演じた。全体的にブラックコメディの作りで、辛辣だが面白く、観客に自省と思考を促すものでもある。あらすじは上記の通りだ。
2023年10月7日以降に改訂された部分があり、確かニコラが発端で、「10月のハマスの一件以降、ガザへの攻撃を繰り返すイスラエルの……」と現在の状況を含んだ激論を交わす場面では、観客達が息を呑んだ。ユダヤ系であるユディトは「わたしはベルリンで生まれてベルリンに住んでるのに、ドイツ人じゃなくて、ユダヤ人って呼ぶんだ?わたしに、イスラエルによるガザ侵攻の責任を取れって?そもそもヒトラーがいなければ、イスラエルを建国する必要もなかった」というような内容を話す。激論を交わす中、今も多くのドイツ人がうっすらと抱えるアンチセミティズムが暴露される。ユディトの夫、フィリップさえも。
わたしは、世界に離散せざるを得なかったユダヤ教を信仰する人たちと、現在のイスラエルによる虐殺行為を支持する人たちを、混同することはない。だが、それらを一緒くたにしてしまう人が相当数いるだろうことは想像がつく。世界中のどこでも起こっていることだ。ある国の政治が自分の国にとって不利なことをする時、そのある国から来て住んでいる人や遊びに来ている旅行客を憎悪し、攻撃する人々がいる。日本にももちろんいる。
わたしがベルリンに長期滞在していた2015年は、イラクやシリアから大勢がドイツへ避難しており、中東系差別が高まっていた。アジア系差別は、最近の米アカデミー賞での出来事からもわかる通り、マイクロアグレッションが少なからず存在する。イスラエル出身知人との会話から、2023年10月以降のドイツではアンチセミティズムが高まっていることを感じる。
マイクロアグレッションと思われる行為を経験した時は、「あ、レイシズム?」と聞くといい、という意見を目にするが、本作に全くこの通りの場面がある。ユディトと画商の間で、「ああ、あなたレイシストなんですね?」「レイシストだって!?違う違う、わたしは黒人もアジア人も好きだし……」「ああそう!じゃあアンチセミティストなんだ!」「いや、あなたはとっても素敵だ」「は?」というような会話が起こる。少なくともレイシズムは悪だと理解している相手には、有効である可能性が高い。
最後に。本作はロンドンのヤングヴィックシアターで翻訳上演されている。わたしも翻訳したい。どなたか一緒にやりませんか?
ドイツで観られるお芝居の本数が増えたり、資料を購入し易くなったり、作業をしに行くカフェでコーヒーをお代わりできたりします!