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『火の顔/アンティゴネ』上演情報解禁

『火の顔/アンティゴネ』公演の詳細が発表されました!

深作組ドイツ演劇三部作の第一作『火の顔』再演と、〈戦争と女性〉を共通テーマに掲げた新三部作の第二作『アンティゴネ』が、同キャスト同空間、マチソワ日替わりで上演されます。深作組新旧三部作を繋ぐ二つの〈家族劇〉を、ぜひご覧ください。
初演の北川拓実さんからクルトを継承する川﨑星輝さん、演出深作健太さんのコメントは、こちらをご参照ください。


*以下、作品テーマや内容への言及を含みます。
 観劇へ向けた予習がお好きな方向けかと思います。








『火の顔』

1998年にミュンヘンで初演されたマリウス・フォン・マイエンブルクの『火の顔』は、家庭という外からは伺い知れない密閉空間で表出する、様々な形の暴力を描く家族劇です。

深作組ドイツ三部作の第一作として初演を迎えた2021年3月の『火の顔』では、コロナ禍でより密閉性が高められた家庭の窮屈さが意識されていたように思います。
そして今、2023年のわたし達を取り巻く社会、世界の状況は、二年前と同じではありません。クルトが最後に語る〈43秒〉かけて落下するような〈火〉の力に固執したのは何故か、演出の深作さんと共に改めて考えています。

「43秒 爆弾」と検索してみてください。クルトが没頭した爆弾作りの果ては、全世界を破壊し尽くせる爆発力です。この力を恐ろしいと感じるのは、わたしが日本で育ち、その破壊力の残酷さをより強く意識するからでしょう。一方でアメリカやドイツで育った方が想像するこの炎の力は、また違うものであるはずです。43秒かけて落下した強力な爆弾の開発がいかにして進められたか、なぜ急ぐ必要があったのか、火と人間の関わり、そして何よりもクルトはなぜ〈破壊する力〉を求めたのか。

新たな炎の形を、劇場で一緒に目撃しましょう。


『アンティゴネ』

そして連続同時上演される深作組新ドイツ三部作第二作目の『アンティゴネ』は、古代ギリシアの劇詩人ソフォクレス(ソポクレス, Σοφοκλῆς)の『アンティゴネ』(Ἀντιγόνη)を、19世紀の詩人ヘルダーリンがドイツ語に訳し、20世紀の劇作家ベルトルト・ブレヒトが戦後のドイツに重ね合わせて戯曲化したものです。それをわたしが日本語に訳し、演出の深作さんと上演台本を作成しました。2023年はブレヒト生誕125周年(1898年2月10日生)という節目の年でもあります。

新ドイツ三部作は〈戦争と女性〉を共通テーマに掲げています。2022年10月には第一作目として、シラーの『ジャンヌ・ダルク』が夏川椎菜さんの主演で上演されました。女性がタイトルロールを演じる作品は、現代においてもけして多くはありません。主演 大浦千佳さんのアンティゴネがとても楽しみです。

亡きオイディプスの娘『アンティゴネ』は、現支配者である叔父クレオンの布告によって禁じられた〈脱走兵である兄の埋葬〉を強行し、罪に問われます。
2500年前に書かれたとは思えないほど、ブレヒト版の初演1948年当時は記憶に新しかった第二次世界大戦や、現在も続く世界の〈戦時下〉の権力者の言葉と近似しており、極めて写実的であることに驚きます。

ナチ政権下において戦線の離脱や軍からの脱走は〈国防力破壊〉行為であり、非常に簡易的な裁判の末、ほとんどの場合は死刑に処せられたそうです。その重大な罪を犯した兄を思い、国の定めた法に反抗したのがアンティゴネであり、彼女をまっすぐ愛し、父親であるクレオンを説得しようとするのが川﨑星輝さん演じる許嫁のハイモンです。

『火の顔』と同じ美術セットの中で演じられるブレヒト『アンティゴネ』は、よりいっそう家族-社会-国家の繋がりを想起させるものになるのではないか、と想像しています。私自身、お客様とともに劇場で体験するのがとても楽しみです。


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