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『青のフラッグ』ありがちで単純な恋愛関係ではなく、複雑な恋愛関係の歪みが面白い!

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/堀江貴文

高校三年生になったばかりのクラス替え。主人公の太一は、仲間たちとはほとんど絡まないクラスに配属される。

同じクラスになったのは野球部主将で幼馴染のトーマと、何をやってもドジでノロマな二葉。チビさも含めて同族嫌悪なのか、太一はそんな二葉のことが嫌いだった。

ふとしたきっかけで彼らは話をするようになり、太一は二葉が幼馴染のトーマのことを好きだと知り、彼女をヘルプしようとする。生来のお節介のなせる技だ。しかし物事は簡単には進まない。トーマはクラスの人気者でリア充の高身長だ。

太一は中学生から高校生にかけて、目立たないグループとばかりつるむようになっていた。しかし、明るくて社交的なトーマにリードされる形で彼らはもう一人の女子、真澄を加えた4人で友達関係となっていく。

しかし事態は、そんなに単純な”よくある三角関係”では収まらない。

一巻の最後で真澄はトーマに意味ありげな一言を発する。トーマが本当に好きなのは誰なのか。それは二巻三巻とだんだんと明らかになっていくのだが、当事者たちの半分はまだ、事態には気づいていない。

単純な男女の恋愛関係ではなく、もっと複雑な何かがそこにあるのは明らかなのである。無邪気に、しかし真剣に恋愛関係や自分の不甲斐なさに悩む当事者と、次元が違うフェーズで悩む当事者サイドのギャップに読者はやきもきする。

作中の恋する者が想うまっすぐな愛情と、それを受け止める側のギャップが、さらに読者をやきもきさせる。

なんでこんな間抜けでドジな自分なんかを好きでいてくれるのだろう?私は好きでいてくれるあの人になんか到底釣り合わない。

なんて、誰かに恋された人は一度は抱いたことがある感情なのではないか。恋愛経験の少ない少年少女は、その感情が自分を責め立てる。それを見ている読者たちはさらにやきもきするという展開となるのだ。それがこの作品の魅力である。

少年誌のありがちで単純な恋愛関係ではなく、複雑な恋愛関係の歪みがこの物語を面白くしている。ドラマ化してもキャスティングも含めて興味深い作品である。そして今後の展開が楽しみすぎてドキドキである。