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悪い奴ほど美味しい?天才・福満しげゆきのエッセイ漫画でない作品の面白さ『ひとくい家族』

【レビュアー/新里裕人

本作は、人間を食べる家族のお話です。

「人を食い物にする」といった例えではなく、フライにしてもぐもぐ食べちゃってます。

ちょっともう、意味が分かんないかもしれませんが、こちらに制作の経緯が書かれています。

一口でいうと、映画『万引き家族』に着想を得て描いた漫画なのですが、
それが「ひとくい」になってしまう点が、この作者の天才である所です。

ここで作者の福満しげゆき先生について解説します。

デビュー作の『まだ旅立ってもいないのに』(青林工藝舎/2003年)など、
最初はネガティブな登場人物が不条理な状況に追い込まれるような短編を描いていましたが、

『僕の小規模な失敗』(青林工藝舎/2005年)あたりから、自伝的な漫画を描くようになり、

奥さんにスポットを当てた漫画『うちの妻ってどうでしょう?』(双葉社/ 2008年)の人気をきっかけに、家族(主に奥さん)にスポットを当てたエッセイ漫画を数多く描くようになります。

初期の短編が好きだった私にとっては、エッセイ漫画家になってしまった福満先生に、少し寂しい思いをしてたのですが、2013年に信じられないような作品が登場します。

『就職難!! ゾンビ取りガール』(講談社/2013年)は野良猫レベルで、ゾンビが町中を徘徊する日本で、ゾンビ駆除の仕事をする(いつも通り)ネガティブな主人公の青年と、アルバイトとして応募してきた無口なヒロインの女の子の日常を描いた物語……なのですが、これが圧倒的に面白いエンターテインメント作品に仕上がっています!

福満漫画の特徴として、ヒロインがエロ可愛い! のですが、彼女と主人公が仲を深めていく描写が福満漫画とは思えないほど(失礼!)テンポが良い! 
そして、クライマックスには狂暴なゾンビとのバトルが描かれているのですが、文句なしにカッコ良い!

そして今回の『ひとくい家族』は、「こっち側」の作品です。

異常な環境を「日常」に収めてしまう、独特の空気感。

エロ可愛いヒロイン!

そして軽快なバトルアクション!

こんなに奇妙な話なのに、ぐいぐいと引き込まれてしまします!

この漫画の基本法則として、悪い事をした人間の肉は美味しくなる、というものがあります。

人を虐げると、被害者の身体から感知できない未知のエネルギーが抜け落ちて、加害者の体に吸収されるのだそうです。なので、ヤクザや悪徳企業の経営者の肉体には、こうしたエネルギーがたっぷり溜め込まれているため、滋養があっておいしい、というわけです。

本当かどうかわからないので、誰か憎たらしい会社の上司とかに噛みついて確認してくれないでしょうか?

現在、一巻発売中。

最終話では、かなり衝撃的な展開が待っていますが、あとがきを読むとさらに衝撃を受けます!

想像を超える衝撃を味わいたい方は、ぜひ読んで下さい!