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銭湯+ビールはなぜこんなにも人を狂わせるのか? この誘惑には抗えない『昼のセント酒』

漫画も好きだが、銭湯も大好きだ。

最近は郊外のスーパー銭湯に行くことのほうが多いが、昔ながらの銭湯も悪くない。小ぎれいな飲み屋もいいけれど、たまに場末のカウンター居酒屋がミョーに恋しくなるのと同じような感覚。手足を四方に伸ばして、肩までじっくりと熱い湯に浸かる気持ちよさは、ほかの何にも代えがたい悪魔の所業である。

のぼせてきたら半身浴に切り替えたり、ぬるいお湯でリセットして、また全身で熱い湯を堪能する。「ああ、しみる~~」と思わず息を吐く。

熱して、冷やして、しみる。俺はカレーのジャガイモ、おでんのダイコンか。途中からはサウナや露天風呂なんかも楽しんだりしつつ、まるで修行僧のように身体をいじめぬく。

ミスチルは歌った。

”高ければ高い壁の方が 登ったとき気持ちいいもんな”

思わず口ずさむ。

”熱ければ熱いお湯の方が 上がったとき気持ちいいもんな”
”まだ限界だなんて認めちゃいないさ”

「いや、この辺にしておこう、アレが待ってる」

もちろん、アレ=キンキンに冷えたビールである。身体が火照っているから、ビールが食道を通っていくのがわかる。

鬼に金棒。唐揚げにハイボール。銭湯後にビール。

スーパー銭湯だと施設内に食事スペースが付いているところも多い。
この組み合わせを考えた人には全銭湯愛好家を代表して表彰したいくらいだ。

銭湯に行くならこの時間帯がベスト!

ところで、みなさんはいつ銭湯に行くだろうか?平日の夜? それとも土日?いやいや、もっともゴクラクを味わえる時間帯は何と言っても「平日昼」だ。

誰もいない、まっさらな一番風呂に浸かれるのはこの時間帯を置いてほかにない。今回は、「でもお昼は仕事が・・・」と悩むあなたにオススメしたい作品をご紹介しよう。

原作は『孤独のグルメ』の原作者である久住昌之さん、漫画化したのは『戦争めし』『しあわせゴハン』の魚乃目三太さんという、夢のコラボレーションである。

主人公は広告会社で営業マンをしている内海孝之。営業成績はどん底で、上司からはいつも厳しい叱責を受けている。

飛び込み営業にいったものの、結果はまた惨敗。そんななか、ふと銭湯の煙突が目に入る。何を隠そう、内海くんは大の銭湯好き。いまなら一番風呂を狙えるかも・・・と、あっさり誘惑に負けて湯につかるのだった。

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う、うらやましすぎる・・・!※『昼のセント酒』(久住昌之/魚乃目三太/幻冬舎)一巻より引用

「ああ~申し訳ない!」と口にはするものの、ご覧のとおり顔は全然反省してない(笑)そして、営業マンとしては大失格のビールまで・・・。

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魚乃目三太さんが描く、本当に幸せそうな表情。※『昼のセント酒』(久住昌之/魚乃目三太/幻冬舎)一巻より引用

一度この幸せにハマってしまうと、もう抜け出せない内海くん。会社には「ノーリターン」と言いつつ(上司にはサボっているのがバレバレ)、真昼間から銭湯に通いまくる習慣がついてしまう。ダメなサラリーマンであることは明白。でも幸せそうだし、こういう暮らしもいいのかも・・・。

“馬鹿か。馬鹿でよい。否、馬鹿でよかった。”

内海くんがつぶやくのも無理はない。

この作品で紹介しているのは、すべて実在する都内の名銭湯だ。銭湯の近くの飲み屋もどれもシブくて良さそうなところばかり。読んだら明日にも「銭湯+ビール」を試したくなること請け合いである。

ちなみにこの作品、TEAM NACSの戸次重幸さん主演でドラマ化もされている。

戸次さんと言えば、市川由衣さんと結婚したっていうだけでもうらやましいのに、役ドコロもうらやましすぎる・・・。『孤独のグルメ』は飯テロドラマと評判になったが、こちらも「風呂&ビールしてぇ~」という声がいまから聞こえてきそう。

都内の銭湯は激減しているものの、この作品をきっかけに都心にもたくさんスーパー銭湯ができるといいなぁ。サボリーマンは増えそうだけど・・・。まずは「昼のセント酒」しに、新宿にできたテルマー湯に行ってみようかな。

WRITTEN by 苅田 明史
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
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