小さな物語と、わずかに重なるフレーバー

初対面の人に自己紹介をするのが苦手なのは、わかりやすい肩書きだけでは本当の自分を伝えられない、と感じるからだ。

先日参加した読書会では、「ひらさんは整体師でnoteを書いていて…あと何かありますか?」と話を振られて、ちょっと困ってしまった。

何かはあっても、ちょうどいいものがわからない。


職業や趣味について話すことは簡単にできるけど、そこで抜け落ちてしまう断片的な私を伝えることはできないものかなあ、と思った。


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「物語」や「ストーリー」という言葉を聞くことが、最近何度かあった。

たとえば、この前読んだ『人生の勝算』に、「消費スタイルが、単なるモノ消費・コンテンツ消費から、ヒト消費・ストーリー消費に移ってきているのです。」と書いてあったり。

よく参加するヨガのイベントで、ひとつのテーマを10分で話すストーリーシェアというのをやっていたり。

ストーリーの文章、ストラクチャーの文章」というnoteを読んだり。


そうやって「物語」への関心が高まっていた私は、「soar campus〜社会を編集するための“小さな物語”の紡ぎ方」をsoarが開催することを知り、すぐに申し込みをした。


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イベントのなかで特に印象に残っているのは、「LITALICO発達ナビ」編集長の鈴木さんが、“小さな自己紹介”をしていたこと。

自己紹介は、肩書きや経歴、実績など客観的な自分の情報を話すことが多い。

それを“大きな自己紹介”というのに対して、“小さな自己紹介”は、自分の好き嫌いとか得意不得意とか悩みとか、主観的な自分の感覚を語ることをいう。

私が小さな自己紹介をすると、こんな感じになる。


◆小さな自己紹介◆
 東京23区のなかでも静かな埼玉寄りの区で生まれ、引っ越して町工場が多い区で育った自然派シティボーイ。集団行動とかお金の管理は苦手だけど、人前で話すことやチームで何かを創るのは好きです。いつのまにかモノをほとんど持たなくなりましたが、欲しい本はいつもたくさんあって時間とお金が足りない!最近は映画にも興味があるのですが、平日一緒に見に行く人がいないのが小さな悩みです。


肩書きとか経歴とか所属は、もちろん私を構成する要素のひとつではあるけど、それよりも、こうやって自分の特徴を話す方が、ずっとおもしろい。私の欠けているところや歪(いびつ)なところを含めた、私の人となりをもれなく伝えられる気がする。


これも立派な自己紹介だよなあ、と思った。

私が自己紹介を苦手だと感じていたのは、「(自己紹介は)自分を表す肩書きについて話すもの」だと思い込んでいたからみたいだ。

だけど本当は、そういうことを話してもいいし、小さな物語を話してもいい。

どうせ正解なんてないのだから、自分の好きなことを語ったり、最近あった嬉しかったことを話してみる。そうやって自分の心を動かしながら話す方が聞いてる側も印象に残るのではないか、と思う。


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コーヒーとフードのペアリングを学ぶ、LIGHT UP COFFEEとBAKE CHEESE TARTのコラボセミナーで、こんな話を聞いた。

食べ物とコーヒーの組み合わせで大切なのは、
(1) 共通のフレーバーがあること
(2) 足し算でより豊かになること


酸味や苦味などの大きな軸のほかに、コーヒーにはそれぞれ独特なフレーバーがある。たとえば、今回BAKEのチーズタルトと一番マッチした「エチオピアのケルー」はこんなフレーバーだ。

「ピーチやパイナップル、グレープフルーツのような明るい果実味に、紅茶キャンディーのような柔らかい甘さ。」

爽やかなレモンっぽいフレーバーのなかにチーズタルトと重なるところがあって美味しかったのを、よく覚えている。


話を聞きながらコーヒーを飲んだとき、小さな物語みたいだなあ、と思った。

コーヒーは飲み物で、チーズタルトは食べ物。
コーヒーは苦くて、チーズタルトは甘い。

大きく括ると別々なカテゴリーになるコーヒーとチーズタルトも、わずかに感じられるフレーバーのなかに重なるところがある。そしてその重なりがあるから、それぞれの違うところを足し算として捉えられるようになる。


フレーバーのような重りがあれば、私たちも違うことをより豊かに共有できるのかもしれない。それはどんな些細なことでもいい。

まだほとんど話したことのない気になる人と好きな作家やアーティストが同じかもしれないし、気があわない職場の人とお気に入りのお菓子が同じかもしれない。この前初めて会った人とは、旅先ですれ違っていたかもしれない。

どんなことでもいいから、小さな物語やわずかなフレーバーの重なりを探してみる。必要不可欠なことではないけれど、その重なりを探すことで、希望よりも不安を感じることの多いこの世界を少しでも生きやすくなる、と、私は思う。


いくらコミュニケーションをとったって、人は一人ひとり全然違うのだから、100%分かり合うことなんてできない。だからこそ、自分のことを伝えるときに大切なのは「小さな物語を自分の言葉で話すこと」であって、自己紹介で悩んでいた私がするべきだったのは、わかりやすく伝えようとすることではなく、勇気をもって自分をさらけ出すことだったのだ。

弱いからこそ強がってしまうこともあるけど、感じたことをそのまま言っちゃうことがあってもいい。そしたら、昨日より少し、笑顔でいられると思うから。

LIGHT UP COFFEE
HP:http://lightupcoffee.com/

BAKE CHEESE TART
HP:https://cheesetart.com/



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