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常(つね)を超える

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この文を書いたのは今から9年前に、私が在籍していた京都大学木質科学研究所の木材物理部門の50周年の記念事業として小冊子を発行するに当たり、投稿したものです。かなり厳しい内容になっ… もっと読む
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「常(つね)を超える」 “おわりに”

木材物理部門が50周年を迎えたが、私の研究所も今年で10周年の節目になる。齢73歳になったが、所期の目的である木材素材そのものの研究は尽きることがない。タケ材、オイルパーム材を加え広がるばかりである。木材素材そのものは総体として文化的素材であって文明的ではなさそうだ。この材料を生かすためには科学するだけでなく、工芸から建築、人の恒常性、自然環境、経済、政治に至るまであらゆる分野を統一的、根源的に究

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「常(つね)を超える」 “自力本願と他力本願”

人間には自力本願と他力本願、他愛的と自愛的という二種類に分けられるように思える。
不思議な事に、自力本願の人間は自愛的人格を具備しているように思うが意外と他愛的人格を持つものが多い。典型的なのが弘法大使(空海)であろう。このような人物をオルテガはエリートと定義しているのではあるまいか。しかし、99%以上の人間が他力本願、自愛的であるから「衆生済度し難し」ということになる。かくして、現在では木材素材

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「常(つね)を超える」 “木材素材の現状”

木材学そのものは個々の専門分野で深化し、多くの知識が蓄積されてきたが、木材素材そのものはこれらの知識を集積し、他材料とは隔絶した機能を体系化し、実業に資するという面では散々たるものである。ドライング・セットを悪用したドライ・ビームは、小割にすると割れが縦横に走り、使い物にならない。年間200万立米も輸入されているホワイトウッドを用いた集成材は火事になるとメルトダウンよろしく崩れ落ちるので消防士は中

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「常(つね)を超える」

「常(つね)を超える」
この文を書いたのは今から9年前に、私が在籍していた京都大学木質科学研究所の木材物理部門の50周年の記念事業として小冊子を発行するに当たり、投稿したものです。かなり厳しい内容になっていますが、「天に唾する」という諺に当てはまることではなく、林業や木材に関わる人達に広く読んでいただき、身勝手かもしれませんが私の思いを共有して頂くと共にこれからの若い人たちの指針の基本になればとフ

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