50年後も同じ気持ちのラブレター

幼少期から少女漫画が大好きだった。
そんなわたしがあなたの作品に出会ったのは小学5年生の頃。
美容室でのカット中、目の前に置かれた1冊の漫画が始まりだった。

やっと2桁を迎えたくらいの当時のわたしには少し難しいお話で、その反面作中の世界がやたらキラキラとして見えた。
今まで読んできた少女漫画とはどこか違う。
詳しい理由なんかわからなくても直感がそう感じていた。

あなたの作品に出会う2年ほど前から、わたしは可愛い洋服に惹かれていた。
所謂ロリータファッションというものだ。
作りたいとか着てみたいとかそういう感情ではなかったが、とにかく可愛いファッションを眺めているのが好きだった。
繊細な生地感と細かなリボンやレースがわたしの心をくすぐっていた。

そのせいだろうか、あなたの作品は瞬く間にわたしを虜にした。
あの時の衝撃は今でもよく覚えている。
身近にありそうで身近にはない、リアルな隠れ家のような場所に足を踏み入れてしまった感覚。
カットを終えて美容室を出てもその感覚は治まらず、頭に叩き込んだその漫画のタイトルを何度も呟きながら家まで歩いた。
それなのに、忘れまいと声に出し続けていたはずだったのに、鳥頭のわたしは家に着く頃にはすっかりタイトルを忘れてしまっていた。

あの出会いから2〜3年が過ぎた頃。
よく通っていた図書館で、ある作品がわたしの目を引いた。
朧げながらも間違いなくそれは美容室で見たあの漫画と同じような目をした女の子だった。
奇跡的に全巻揃っていたその漫画を急いで抱え込み読書コーナーで、はやる気持ちのままページを捲り続けた。
あなたの作品はまたもわたしの心を鷲掴みにした。

それからのわたしの行動は早かったように思う。
図書館にあるあなたの作品を片っ端から読み込んだ。
あなたの大ヒット作品は人気ゆえになかなか巻数が揃わず、迷った末少額のお小遣いを手に書店の出入りを繰り返した。
まだ幼さの残っていたわたしはあなたに心酔していた。

その頃からもう10年近くが過ぎた。
あなたの作品は読み返すたびに違う印象を与えてくれる。
苦手だった人物を好きになったり、理解できなかったセリフの意図がわかるようになったり。
周りの環境や自分の成長度合いで見える景色が変わっていく。
内容はいつだって変わらないのにどんな時でも作品たちがわたしを理解してくれるような、そんな気がする。
わたしはあなたの作品とともに大人になってきた。

昨年、あなたが生み出してくれた新たな空間があった。
こんなことを言うのは烏滸がましいだろうがあなたをより一層知ることができたようで心の底から嬉しかった。
1本の線の力強さと繊細さ、セリフがなくとも伝わる表情の細かさ、それらをあんなに間近で感じさせてくれたあの展示会は一生の宝物になると思う。

わたしはこれからもずっとあなたの作品と生きていきたい。
たくさんの作品を産んでくれて有難う。愛しています。

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