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【読後想】『52ヘルツのクジラたち』★★★★★

 夏休みの宿題で読書感想文が苦手だったけれど、感想でも書評でもなく、想ったことを勝手に書き留めるだけなら出来そうだということで記録する読後想。

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「誰かに心身ともに包まれ満たされたというかけがえのない記憶」があるかと問われると正直言って無いと答えざるをえない。ただそれだけのことで自分と主人公を重ね合わせるのはおこがましいと分かってはいても、この一節を読んだ時に思わず空を見上げた。年甲斐もなく零れそうになる涙に辟易した。

 というわけで、今回私が選んだのはこちら。

町田そのこ (著) 52ヘルツのクジラたち(中公文庫)

 こうした本を読んでいて困るのは、読み終わるまで憂鬱な時間が続くことだ。登場人物たちの思いが伝染して私の日常を侵食してくる。それは今の私だけでなく過去の私を閉じ込めてある硬い殻をも蝕んで、封印していた記憶をいたぶってくる。
 しかし、最後の一文を終えた後に来る清々しさに救われる。現実に戻って来て救われる。

 というわけで、私の評は★★★★★。
 星五つだ。

 荒んだ親子関係、虐待、死、希望、失望。
 並べてみると何の救いも見いだせないようなテーマだが、それでも人が生きていく道を模索することは無駄ではないし、諦めてはいけないと教えてくれる。現実は小説のようには上手くいかないという考え方もあるが、事実は小説より奇なりとも言う。
 何れにせよ選択するのはあなた自身なのだ。人生をどういうものにするのか決められるのはあなたなのだ。

おわり

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