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Netflixドラマ『三体』

 中国の奥地にある電波天文台。大きなパラボラアンテナは星の観測ではなく宇宙人との交信を試みるためのものだった。
 ある時、狙われてしまうので交信をやめろというメッセージが宇宙から届く。それを見た中国人女性の博士は、人類は自らで存続することが出来ないと助けを求める信号を発するのだった。

 異なる文化の社会との間には壁が立ちはだかっていて、未開の地が大半で地球がまだ広かった頃は開拓・植民という名の侵略が平然と行われていた。その当時の名残は人種差別として未だ残っているものの、グローバルという掛け声のもと地球がひとつになった今、攻め込む未開の土地は残されていない。だから自ずと主題は地球対異星人ということになるのだろう。

 境界線の外には異質なものが広がっていて、内側にとっては脅威となる。だから、攻撃によって守ることは正当化される。たとえ外側の人々を殺すことになっても。
 これは今でも続く戦争の原理そのものだ。
 ひとつの線を引くことで擬似的に立ち現れる内側と外側という両面は、越境することは侵略と呼ばれ争いしか生まない。

 宇宙からの脅威に対して地球上の人々が一丸となって戦うというのは常道だが、宇宙人の目が地球を覆い尽くして全てを知られているという設定は袋小路に追い詰められたも同然の人類が試されることになる。
 もっとも、猛スピードで地球に向かっている宇宙人が地球に到達するのは400年後というから、妙にリアルというかリアルじゃないというか、宇宙の大きさと物語の壮大さを感じさせる。

 原作を読んでいないので、原作とは違うという指摘は当然出来ないが、SF長編大作が好きだった過去を持つ私の印象では、細かな描写で埋め尽くされた長いストーリーを8話のドラマにするのだから無理があるというものだ。その割には面白く見れた。
 シーズンを多くして話数を多くしたとしたら原作を忠実に再現し易いとは思うが、そうなると間延びしがちだし、ガチのSF小説を映画化・ドラマ化したマジなSF物って意外と一般受けが悪いから難しい。

 ところで、登場する磨かれた金属製のVRゴーグル(?)が格好良くて欲しくなる。外観がミラーのようで周囲の映像が映っているのに、撮影しているカメラが映り込んでいないのだから意外と凝った映像になっている。

 いつも空から見ている目がある、誰かに監視されているというのは中国の監視社会を強烈に物語っているようでもある。監視されることが嫌いな欧米ではそんな宇宙人とは戦うの一手になるのだろう。
 しかし、日本で昔から言われたお天道様が見ているよというのが宇宙人のことなのだとしたらと思うと、ちょっとぞっとする。

おわり


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