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こんな匂いを、エレナは知っていた。 十年前、深夜にベッドの上で目覚めたとき,大好きなマホ…
はるか遠くで弾けた爆音は、エルたちのいる宿舎の敷地にまで鈍く響き渡った。 「まさか……?…
エルとカペラが会っていたのと同時刻。 エレナ・ローゼンハイムは長い凸凹の坂道を登って、喫…
カペラ・オリーヴェの部屋にエルが訪れたのは、午後の授業が終わった夕方のことだった。 早く…
空気の透きとおる朝。雲ひとつない秋晴れの空にむかって硝煙が立ち昇っている。 エルは熾きが…
降り注ぐ火の粉が公会場を昼間のように照らしていた。割れる火炎瓶。絶え間ない爆発音。逃げ惑…
豪華絢爛、という言葉が今日ほど似合う日も少ないだろう。 錦糸の刺繍が施された紅麻の帷子を身にまとい、客を接待する女たち。 村の若衆は早くも紹興酒が回り、千鳥足で歌い、踊る。 都市庁の高官は冠にあしらった宝石の美しさを自慢している。 ふだん贅沢には無縁の農民たちも、この日ばかりは髪を整え、化粧をし、一張羅を着こなして街に繰り出す。 帝国民にとって一年に二度だけの楽しみ、分天の祭りの夜がついに到来した。 正装姿のハマル神父のそばに、可憐なホワイトドレスが際立つエレナが立ってい
「だっさ。こいつが強盗を倒したって大嘘ね」 梯子から滑り落ちて頭を抱えているエルを見下ろ…
「本校が建っているハレーという地域は、五百年前まで城塞として利用されてきた。北側には当時…
その日は夕暮れと同時に激しい夕立となった。 エルは図書館の仕事を終えると休む間もなく女子…
「調べてないってどういうことよ!」 エルは髪の毛を逆立てて怒る女性というものを初めて見た…
乳白色の朝日がカーテンを柔らかく照らしている。薄い雲のヴェールに包まれた空の下を鳶がゆっ…
たなびく雲の合間から、白沙を撒いたような星たちが瞬いている。 すっかり夜が更けた「裏の市…
エレナが坂道を駆け下りるほんの少し前、エルは守衛たちの追跡を逃れて同じ坂道を登っていた。 足腰に自信のあるエルでさえ、凸凹ばかりの坂道には閉口した。古代、この坂の上の台地に城砦が築かれ、外敵の動きを常に探査していたという。 「……!」 エルはあまりの美しさに目を奪われた。彼の背後にはウノ市街のまばゆい夜景と湾港に停泊しているいくつもの船、そしてまっくらな近海の様子がはるか遠くまで見渡せた。 しばしの間、彼は昼間のことを忘れて夜景に見入っていたが、無粋な声に意識を遮られ