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やさしい人のやさしい話

やさしさは、人を救います。
やさしさは、人を幸せにします。
やさしさは・・・


昔、ある村に優しい娘がいました。
結果、その娘が村を滅ぼしました。

みなさんは、やさしい人間・人格になりたいですか?

俗にいう「やさしさ」は人を救い幸せにします。それは間違いありません。
私もそう思います。

ただ、私は、社員に仕事では、やさしさは捨ててくださいとお願いしています。

私は、幼少期。両親の仕事の関係上、祖父母に育てられました。
祖父は、戦争を経験した絵に描いたような亭主関白でした。
祖母は、絵に描いたような昭和の嫁でした。
嫁は嫁ぎ先の家に尽くし、夫には逆らわない。
味噌汁が熱いだけで、お椀を投げられ、ご飯が冷めているだけで箸を投げられる。
でも文句一つ言わず、家に尽くしました。
昭和の家庭の見本のような祖父母でした。
祖父はとにかく厳しく、祖母はとにかく優しかった記憶があります。
こういうと随分昔の様なニュアンスで伝わってしまいますが、田舎では、まだまだ存在している常識です。

10年前、私が手伝っていた制作会社で倒産寸前まで追い込まれる出来事がありました。
その出来事の発端は、一人のやさしい社員でした。
誰にでも好かれ、人脈もあり、仕事もできる。
私もその人のことを慕い、魅力的に思っていました。

ある村の優しい娘は、村のために毎日神様にお祈りをしていました。
穀物が枯渇しない様に、水が汚染されないように、疫病が蔓延しないように・・・

しかし、そんな努力も虚しく、村には疫病が流行り初めました。
娘は、来る日も来る日も神様にお参りを続けました。

そんなある日、娘の前に神様が現れました。
「お前の願いを何でも一つ叶えてやろう」
神は娘にそう告げました。
優しい娘は、急いで村のみんなにこのことを報告しにいきました。
きっと、皆が喜んでくれると信じて。

仕事において、報連相は必須です。
進行中のプロジェクトに関して、状況や進展・展望を共有する。
それが常識です。
その社員は、報連相はしていたのですが、全てではなく、やさしいが故に自らに抱え込む癖がありました。
クライアントの願いを叶えたい、会社の願いも叶えたい、そして関わった全ての人の願いを叶えたい。
全てを幸せにしたいがために、限界を超え自らを滅ぼしました。
結果、プロジェクトはなくなり、会社や関係者は利益と信用を失い、
労基から指導を受け、責任を問われました。

私の祖母は大腸癌でした。
ステージ4。見つかった時には手遅れでした。
祖母は、家に迷惑をかけてはいけない。
私のために、家の財産を使うわけにはいかない・・・

祖母が嫁いだときは、名家とは名ばかりのそれは貧乏な暮らしを強いられたそうです。
村の寄り合いは一番下座、川の上流に家はあるものの、それは往年の輝き。
服も買えない家計だったそうです。
「甘えは敵」「甘えは恥」そう言われて私も育ちました。
来る日も来る日も身を粉にして働き、何とか父を育てあげたそうです。
家同士で結婚を決められ、自分の意思はそっちのけ。
それでも子のため、家のために尽くしてきた祖母。
ステージ4。さぞ、激痛だったと思います。
周りには悟られまいと、気丈に振る舞い、倒れた時には手遅れでした。
やさしいが故の最後でした。
祖母が頑張ってくれたから、私は自由に夢を追うことができました。
訃報を聞いたとき、私は仕事で駆けつけられませんでした。
祖母の元に帰れたのは、葬式の3日後。この話を聞かされたのはその時でした。
声をあげて後悔しました。
祖母は、夢を叶えようと頑張っているからと、私のことを気遣い黙っておいてくれと言ったそうです。どこまでもやさしい祖母でした。

優しい娘は、村に神様のことを報告しました。
村人たちは喜び、早速願い事について話合いを始めました。

ですが、そのうち村には争いが起こりました。
子は泣き、大人たちは罵りあい、己の欲を叶えるために傲慢に振る舞いました。
疫病患者は殺され、村は炎に包まれました。
見かねた娘は、この悲劇を終わらせようと神の元へいきました。
そして、村は娘もろとも滅びました。
優しいが故の願いでした。


やさしさは、人を救いますか?
やさしさは、人を幸せにしますか?
やさしさは・・・やさしさとはなんですか?

人は頼られたいものです。好かれたいものです。

優しくすると頼られ、好かれます。
それは、周りもまたそうです。

20代のころ、銀座のホステスさんに言われた言葉があります。
「甘えるのも礼儀です。」
その人曰く、甘えることが商いの自分たちにとっては世間のやさしさは浅はかに映ると。

その時の私には、衝撃でした。

その人のその言葉は重く、熱く、大きく、それまで甘えることは恥だと思っていた私の心にやけに響いきました。
人にやさしくする分、あなたもまた、人を頼ってください。
人にやさしさを求めてください。

時々、人に優しくされた時に私はこのことを思い出します。

そして素直に「ありがとう、また返すね」と言うことにしています。

(※こうしてあげたいという理想は無限に広がり、大きくなります。
しかし、その理想を叶えてあげたいと思う「人」には限界があります。
誰しもに限界があります。それを自負することが大切です。)

本当のやさしさとは、今ではなく。
その人の将来、未来を救う、救おうとすることのような気がします。

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