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『幻夜』君に届かぬ #匿名超掌編コンテスト参加作品

偽物の月明かりの下を1人、君と歩く。
「もう行くね」
脳内に直接響くような柔らかな声。
「どうしても?」
戸惑いと焦り、諦めが僕の胸を掻き乱す。
どうしたら一緒にいられるんだろう。その考えが虚しいことを、本当は僕が1番知っている。
「ずっと君が好きだった…」
なぜ僕は過去形で言う?
「今言うなんてズルいのよ」
君の透き通るような白い手が、僕の頬を多分優しく包む。君の唇がそっと近づく気配がした。その気配が永遠に続くことを願うがしかし、そこには誰もいない。空虚しか残されない僕の頬に、涙が伝った。

「はいカーット!いい涙だった!」

「監督、これは悔し涙ですよ!なんで長瀬はるみがほぼ合成なんですか!キスシーンがあるって聞いてたのに!」
「ゴースト設定だしねぇ」
「ほとんど会えもしないじゃないですか!」
「見えないしねぇ」
「大ファンなのに!」
「『幻夜』の試写会では一緒にいられるよーん」
「せめて彼女の唇の感触だけでも確かめたい!格段に演技に差が出るハズです!」
「いや、唇の感触なんて人間ほとんど一緒だから。なんなら俺ので試す?」
長瀬はるみと一緒なわけがないだろう!
偽物の月明かりの下、僕は叫ぶ。君には届かない。


Twitterにて、穂音さんにお声がけ頂き、参加してきました、500字の匿名超掌編コンテスト!
『試』の文字を必ず入れることと、500字まで。

早めに出したほうが良いですよ!的なことがどこかに書いてあった(気がする)。

2023、とりあえず挑戦。
という抱負を手帳にゴリゴリ書き込んでいた直後ぐらいのお誘いだったので
「あいやー!早速やれってことですか神様、早くね!?」
と、慌てふためく。
2023、最初の神の使いが穂音さんと板野かもさんだった。
note及びTwitterには何かが住んでいるんだきっと。


さて。
書くよりも書いた後のほうがドキドキした。
匿名、恐るべし。
最初全然♡がつかないものだから、不憫で自分で自分に押した。
それから、心を落ち着かせて、他の作品を読んで回る。
度肝を抜かれた。
すげえな!!500字で完全なる世界を作れる猛者が山ほどいる…!!

びっくりした。
少し勉強してから書けば良かった、そう思った。
しかし、もう放ってしまったし、2作目の枠を貰おうか迷ったけど、一作目でこんなにドキドキしちゃったから、とりあえず見守ろう…そうしよう…
とりあえず、我が子の成長を見守ることにしたつもりが、3日目ぐらいにはどこら辺を旅してるか分からなくなって放置。

いや、板野かもさんは、その間、ものすごく丁寧にまとめを作ってくださっていた。
しかし、他の方を追いかけるだけでもわりと精一杯になるのであった。
ああ、我が子よ、君は今どの辺に?
そう思っていたら、板野さんが中間発表を出していた。うおお!すごい!!
ここまでやってくださるなんて!

それで我が子をいそいそ見に行ったらコメントと♡があった、ありました!
いずれも知らないお方から。
うわぁぁぁ、お礼が言いたい!あと、あなたの作品も読ませてくださいどれですか!?こんなご時世だけどキスしたい!!

という気持ちが溢れかえりそうになる、うっかりコメントしそうになったが、匿名なのでめちゃくちゃ我慢した。
匿名じゃなくてもキスはやめておけ、せめてハーゲンダッツを奢りたい。

そして結果は178作品中92位。
低いと落ち込むのか、思ったより高かったと喜ぶのか?
うーむ。正直両方の気持ちでした。
超特急で書いたというのもあって、あわよくばという気持ちの方が強かった。
それよりいいねやコメントが貰えたのがめちゃくちゃ嬉しかった。

匿名とは思った以上にドキドキするものですね。面白かった!
存じ上げている方を色々探してみたけど、全然分からなかったという。
noteは、案外思い込みで読んでいる部分もあるのかなぁ。いや500字だと難しいのかも?と、色んなことを考えてさらに楽しめました。
板野かもさん、穂音さん、ありがとうございました!

また何かあったら、とりあえず挑戦、挑戦!と心に刻みつつ、12月まで覚えているといいな2023とき子。


あ。
長瀬はるみは「長澤まさみ」✖️「綾瀬はるか」➗2
どちらが主演でも、映画観る派です。


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