壊して創る「新しい学校の当たり前」(新曽小学校)
このコーナーでは、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングによる「戸田市未来の学び応援プロジェクト」について、夢のある提案を出された各学校からのメッセージを掲載しています。
第11回は、教師主導の学校の「当たり前」を「壊し」、子供が主語となる学校を「創る」ことを目指す、新曽小学校です!
▼寄附はこちらから
1.なぜこのクラウドファンディングに応募しようと思ったのですか?
変化の激しい社会や予測困難な時代が来るといわれ、新しい時代を生きる子供たちに必要な資質・能力を育む学校のあり方も問われてきました。
明治の学制公布以来の150年間、学校は様々な実践を重ね、子供たちの教育に大きな成果を上げてきました。
しかし、今まで以上に急で大きな社会の変化に対応できる資質・能力を子供たちに育むことを考えたとき、従来どおりのやり方でよいのでしょうか。
子供たちの主体性を育むと言いながら、学校が子供の主体性の芽を摘み取っていることもあったのではないでしょうか。
本校の学校教育目標「夢をえがき計画を立て行動する児童の育成」は、一人一人の子供が将来、「自分の人生の主役は自分」であることを自覚して生きていくための種をまくものです。
そのためには、「子供が主語の学校」であることが必須だと考えています。
そこで、子供が主語になる学校づくりの壁「学校の当たり前」を壊し、新たに「新曽小の当たり前」を創ろうと考えました。
2.昨年度集めた寄附は、どう活用されていますか?
学校の当たり前を「壊して創る」ための方策として、「百聞は一見に如かず作戦」と「ブレない&廃れない作戦」の二つの作戦を考えました。
「百聞は一見に如かず作戦」は、「子供が主語の学び」先進校への視察です。
訪問した学校で、「当たり前」から解放されて生き生きと学ぶ子供の様子を目の当たりにすることで、本校の教員が「何を感じて、どのように考えて、行動するのか」、これまでの「当たり前」の垢をそぎ落として、教員の意識を新たな学校観・授業観・児童観に強制アップデートすることを狙った作戦です。
「ブレない&廃れない作戦」は、学校・家庭・地域で理念を共有するための作戦です。
学校で行っている取組は、教職員の人事異動によって、当初の理念が薄まり取組が形骸化してしまうことがあります。
このようなことを防ぎ、学校文化の継承を持続可能なものにしていくためには、学校運営協議会委員の皆様をはじめ、保護者や地域の方々と理念や文化を共有していくことが必要です。
そこで、「子供が主語の学校」など、さまざまな「学校のかたち」を学校が説明して理解を求めるのでなく、教員と学校運営協議会委員の方が同じ景色を見て、経験を共有することが効果的なのではと考えるに至りました。
皆様からいただいた寄附は、教員と学校運営協議会委員が先進的な取組を行っている学校に視察に行くための費用として活用させていただきました。
視察に行った学校は次のとおりです。
①学校法人茂来学園 大日向小学校・大日向中学校
大日向小学校・中学校は、「誰もが、豊かに、そして幸せに生きることのできる世界をつくる」ことを目的に、イエナプラン教育に基づいて「自立する」「共に生きる」「世界に目を向ける」を大切して教育活動に取り組む学校です。
「子供が主語の学び」の実現に向けて、子供たちがグループリーダーから示された課題をもとに、どのように学ぶかを計画し、それぞれにあった方法で自立的に学習する「ブロックアワー」の時間、子供たちの問いから出発し探究的に学習を進める「ワールドオリエンテーション」の時間の授業の様子を参観しました。
「ブロックアワー」の時間の子供たちの様子は、これまでの授業のイメージと大きく異なり、教員も学校運営協議会委員も目から鱗が落ちるのを実感し、新曽小学校に取り入れるにあたっての課題や方法を考えていました。
また、学校運営協議会委員は保護者、地域の方と学校の関わり方についても質問されていました。
②伊那市立伊那小学校
信濃教育会全県研究大会の授業公開に教員1名が参加しました。
伊那小学校は、子供を中心にとらえる教育観をベースとして、通知表も時間割もチャイムもなく、動物を飼育する総合学習を中心に学びを進めている学校です。
参加した教員は、目の前の事実をみるときの見方・考え方として、次のような学びを得てきました。
脱・予定調和の学びに生かすことができそうです。
③宝仙学園小学校
秋の公開授業研究会「個別最適な学び・協働的な学び」に教員2名が参加しました。
授業参観・パネルディスカッション・分科会での協議を通して、「個別最適な学び」の考え方を再認識するとともに、「指導の個別化」と「学習の個性化」のバランスをとる必要性や2つの要素が意図的に取り入れられた1時間の授業を参考に授業づくりを行いたいなど、授業改善に向けさまざまなヒントを得ることができました。
④文部科学省研究開発学校 研究発表会
東京都目黒区で取り組んでいる「40分授業午前5時間制」の研究発表会に、教員1名・学校運営協議会委員2名の3名が参加しました。
烏森小学校の授業公開に参加した教員は通常よりも5分短い40分授業にもかかわらず、子供が主語の充実した学びを実現しており、授業改善に向けたヒントを得るとともに、今まで以上のチャレンジ精神を得ていました。
目黒区教育委員会全体発表会での講演、パネルディスカッション、ポスターセッションに参加した学校運営協議会委員は、午前と午後の時間の使い分けや40分授業にすることで生み出された時間が子供の学びや生活の質の向上につながっているなどの報告を受け、授業時間が5分短いことについての疑問が解消されるとともに、新しい学校のカタチの可能性について考えていました。
⑤名古屋市立山吹小学校
教頭・1年担任・5年担任の3名で視察しました。
「子ども一人ひとりの個別の発達に焦点をあて、違いから豊かに学び合う環境の中で、子どもたちが自らのペースで、自らの興味・関心や能力、進度に応じて、自立して学ぶことを最大限に尊重する学びづくり」に取り組んでいます。
イエナプラン教育のいいとこ取りを考え、子供たちの「主体的に課題解決に取り組んでいる姿」「互いに認め合いながら、自分のよさや個性を生かし、協働している姿」を目指しているところ、かつ、児童数670名、学級数22学級と学校規模が新曽小学校と同じような規模であるため、ぜひ訪問したい学校の一つでした。(イエナプラン教育の考えを取り入れた学校は小規模な学校が多いようなので。)
山吹セレクトタイムなど、子供たちが自分のペースで、自らの興味・関心や能力、進度に応じて、自立して学んでいる様子を見た教員は、自由進度学習を行う上で「学級経営」と「人間関係」の2つのポイントがあり、学習環境を整えることが必須との考えを得ました。
そして、新曽小学校では、小単元における単元進度表の作成や学級でのふれあい活動を行ってみたいと考えているところです。
さらに、「自由進度学習」や「個別最適の学び」などの用語が一人歩きし、人によって解釈がずれているところがあり、有識者の話を聞くなどして、教員が自分でかみくだき理解しなければならないという課題も見い出していました。
また、視察後に自由進度学習を算数の学習で行った教員からは、以下のような成果が挙げられました。
算数の苦手な子供の積極性が明らかに増していた。自分ができるまで問題に取り組めること、できないことに劣等感を感じづらいこと、計画表にそった学習により、自分の成長が感じられることが大きいように感じた。
算数の得意な子供について、今回は難問をいくつか用意し、チャレンジ問題として提供する形をとってみた。いつもそつなく学習している子供も「あーでもない、こーでもない」と相談しながら悩む場面、解けて歓喜する場面も見られた。今後も「考える楽しさ」を感じさせていきたい。
今回は「一人で黙々取り組む」「友達に相談しながらできる」「先生を優先して使える」の3つにエリア分けして学習を行わせた。これにより、集中して学習できる環境を整えることができた。途中で場所を移動する児童もいて、自己選択できていたし、話し合いの内容も学習内容から外れることはほとんどなかった。
成果がみられた一方で、課題もみられ改善の方法を考えています。
⑥京都市立岩倉北小学校
校長・主幹教諭・1年担任・5年担任・6年担任の5名で視察しました。
岩倉北小学校は、自走自在を校是として、公教育・公立学校のリソースと強みを生かした全方位型教育システムの構築に取り組んでいる学校です。
チーム担任制や児童主体の学校行事、委員会活動などの取組を進め、誰一人取り残さない、個に応じた指導・支援の充実に取り組んでいます。
チーム担任制を導入することで、複数の教員の目で多角的に子供を理解したり多様な関わり方ができるようになったり、教職員一人一人のよさを生かし合い補い合う指導体制ができたりするといったメリットがあることや、学級担任制からチーム担任制への教員の意識の変化が課題であったことなど、導入時から今に至るまでの状況について説明を伺いました。
また、子供が主体となって計画する学校行事や委員会活動などが、単年度、単発の行事ではなく、継続的に子供の資質・能力を育む学びとなっている様子も、校内の掲示物や子供の書いた文章などから具体的に説明したいただきました。
新曽小学校で取り組んでいるルールメイキングなどの進化系として、今後のロールモデルを得ることができました。
⑦福山市立常石ともに学園
公立小学校のイエナプランスクールとして子供主体の学びを展開している小学校です。
複数名での視察を考えていましたが、視察可能な人数の都合により校長が視察しました。
公立の小学校として、イエナプラン教育の考え方をどのように教育課程に反映させているのか、ブロックアワーやワールドオリエンテーションでの子供の学びをどのように見取っているのかなど、「子供が主語の学び」における指導と評価のあり方について知見を得ることができました。
また、自由進度学習といった子供が主体となる取組は、自分で考えて行動することが苦手な子供にとっては辛さの一因となることもあるなど、成果だけでなく課題も含めた子供たちの学びの様子を伺うことができ、今後の参考となりました。
3.このプロジェクトにかける思いを教えてください!
20年後、30年後の社会が、誰もが笑顔で幸せに暮らせる社会になるために、子供たちには「自分たちの社会は自分たちで創る」という気持ちをもってもらいたいと思っています。
そのために、「子供が主語となる新曽小学校」をめざして、「子供が学びのハンドルを握る」「子供が試行錯誤できる」「子供が最適解を創る」ことが、「新曽小学校の当たり前」として、新曽小学校に関わる全ての人の共通の価値観となる学校づくりに取り組んでいきます。
新曽小学校さん、お忙しい中メッセージをありがとうございました!
ぜひ、これまでの教育・学校の「当たり前」を問い直し、「創るために壊す」この挑戦にご注目いただけますと幸いです。
今後とも引き続き、戸田市の教育改革への挑戦への御指導の程よろしくお願い致します!
▼寄附はこちらから
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?