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ピンク/青/はちみつ色

髪をピンクにした。先日取材で会った人は、あっけらかんと、「朝から晩までセックスしてますよ最近」と言っていた。一方私は意外と健全なAV業界が撮影をしばらく取りやめにするという事実を知って、その日にはAmazonでハイブリーチを二本とキャンディピンクのカラーバターを注文し終わった。朝から晩までセックスをしている大学生の夏休みみたいな日々も当然嘆かわしい程に羨ましいけれども、私の髪は朝から晩までどうだ、真っピンクになったのだ。自分の顔の調子を見るのが趣味なのでベッドサイドには巨大な鏡が置いてある。今日はどの程度マシなのか朝一番に確認しないと気が済まぬ。だけれどそれも、毎日今日もピンク色だな、と確認するための装置に成り果てた。友達が「オーラに似合ってる!」とコメントをくれた。よくわかるので、なるべくずっとこうしていたい。韓流アイドルみたいなシルバーピンクじゃなくて、私のピンクはもっと濃い。魂に似合うことだけが大事で、それ以外は本当は、外に出て人と一緒に仕事をするのでなければ、てんで大切にできない。印象の良い見た目って、誰にとって印象がいいという意味なのだろう。史上最高に自分ウケのいい髪色に染まって毎日にこにこしている。誰にも会わない毎日がこんなに都合いいことだなんて知らなかった。純度が増していく。この世界に自分以外誰もいないような気がしていた頃を思い出す。あれは本当に思春期にだけ立ち現れる悪い幽霊みたいなものだったのだろうか?明け方の空は青い。薄い黄色とフィルムグレインの乗ったような青。もっと深い紫色。私の心の色はいつだってこうで、そんなふうだから紫陽花の花が好きだった。笑った顔がひまわりのようだねと言われてものすごくむかついた。

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