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レポ29:田後港第5防波堤灯台(2019/5/2)

鳥取県岩美郡岩美町の北端に位置する田後(たじり)港付近は、日本海の激浪にさらされ奇岩洞窟で有名な浦富(うらどめ)海岸を形成しています。今回は波に削られた奇岩が点在する場所にある個性的な3基の灯台を訪れます…

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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。

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◼️レポ29:田後港第5防波堤灯台(2019/5/2)

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鳥取県岩美(いわみ)郡岩美町の北端に位置する田後(たじり)港。全国有数の漁場が前方に広がるものの、かつてはリアス式海岸の地形に阻まれ陸路から孤立しており、築港しても日本海の高波にさらされ堤防が崩壊したこともありました。

繰り返し行われた防波堤工事により、港をぐるりと護るように延伸した港湾風景もまた、この地を襲う激浪を物語っています。

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まずは港入口にある日和山の展望台へ登ります。展望台には東屋と石灯台がありました。

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石灯台はかつて鳥取藩が領内から納められた米を米倉に搬送するのに、眼下の水路を使っており、そのための目印にしていたとのこと。だいたい1851年前後に建立されたものだそうです。

展望台からは浦富海岸の奇岩も見えますが、東に目をやると防波堤中央部に位置する松島に立つ田後灯台、その先には田後鵜島灯台が見えます。

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防波堤にはおびただしい数の消波ブロックが積み上がっており、まるでうねりをあげる龍の背のよう。

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リアス式の浦富海岸の岩場が広がっている一方で、それだけでは港を護りきれないため大小様々な消波ブロックが。セメントの固まりを無造作に置いたようなものもありました。

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画像では伝わりづらいですが、防波堤の外側に置かれた消波ブロックは一つひとつが2m近くあり、巨大なブロックが累々と積み重ねられている様は、ある意味でなかなかお目にかかれない凄い迫力でした。

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激しい波にさらされ黒に変色したブロック、その上に重ねられている様は、日本海の荒波の苛烈さを容易に想像させるに充分な備えですね。荒天の日など、絶対近づけなさそう。

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そして、灯台が電気で点灯していた時の名残なのか、昔ながらの電柱が立ち並んでいます。この風景もまた貴重です。

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この防波堤の先端から鉄製の橋を渡った岩壁の上にあるのが田後灯台。でも塩害で橋の損傷が激しく、海上保安庁の許可なしでは立入禁止でした。

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港には今でこそ防波堤がありますが、もし防波堤がなければ、ぽっかりと浮かんだように見える岩の島(松島)にそびえ立ち、松の木々で隠されている姿は是非一度、そばに近寄って見てみたいです。

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対岸からの景色。小型の灯台ですが、周辺の景観と相まって、絵になる佇まいです。

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田後灯台には周囲に設置されている消波ブロックをつたっても辿り着けそうでしたが、一つひとつが2m近くある巨大なブロックのため、命の危険を感じて流石に断念しました。

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さらに防波堤の奥に行くと、これまた小島(鵜島)の上に田後鵜島灯台が立っています。

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フェンスの目と鼻の先にあって手が届きそうで届かない。非常にもどかしい気持ちになるのですが、周囲の景観との一体感が素晴らしい。

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鵜島は小さいので、日本海の荒波に耐えられるのかなと不思議に思いましたが、沖合に離岸防波堤があるようなので、おそらく大丈夫なのでしょうね。

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さて、見所の多い田後港ですが3基目の灯台はようやく足下まで到達可能な、田後港第5防波堤灯台です。

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他の2基に比べると少し地味ですが、対岸から臨むと渋い港湾風景が観られます。

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お引越し跡(灯台改築による移設前の設置跡)が顕著に残っているのも、またオツな見所です。

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「灯台だけ」をみると変哲のない姿なのですが、周辺の風景や港と溶け込むと、とても個性的で三基三様な灯台たちでした。

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田後はイカ釣りが有名でアオリイカなども防波堤から釣れるようです。漁船にもイカ釣り用の集魚灯が吊るされていました。

村上 記

年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。