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中学受験をふりかえる③

小4の秋に入った個人塾。クラスは1つで約10人。
体験授業の際に難関を目指す子が多いことは聞いていたので、夏期講習を経ないまま入塾した娘はフルスロットルでのロケットスタートを余儀なくされた。引っ越してきて日も浅く、私立小に通っていることで近所に友達もいなかったので、通っている知り合いが誰もおらず、入塾してからそこが猛烈スパルタ塾だということを知ったのだった。

一応の授業時間はあれど、可能な限り早く来ること、そして授業が延長するのは当たり前。いつ終わるかもその日次第。22時を過ぎることなんてザラだった。他の塾生はスーツケースを引きながら通い、やる気がないと見做されると怒鳴られ鞄を放り投げられる。膨大な量の宿題は0時を過ぎてても終わらせて来い、受験生が22時台に寝るなんてあってはならないことだ!食事時間は暗記時間。お弁当をぼーっと食べるな。味わう時間があったらテキストを置いて見ながら食べるんだ!もちろん、習い事なんてもっての外だ、小5になるころには全てをキッパリやめてこい!

指導の内容自体は納得がいくものだった。とにかく書かせる。手を動かせる方針。今となっては、相手はあくまで小学生、一部の子どもを除いて「無理矢理にでも書かせる、やらせる」ことがある程度必要なことはよくわかる。

先生方からは子どもたちを合格させてあげたいという気持ちがヒシヒシと伝わってきたし、それ故のスパルタだったとは思う。熱く、一生懸命だった。それも非常に伝わってきた。だからこそ、初めは本人もやる気に満ち溢れていたし、私たちも必死にサポートに努めた。

だがその生活に於いて、一つ新たな問題が生じ始めていた。ピアノの存在だ。

年長時よりピアノを始めた娘は、コンペなどにも出場、学校の音楽会などでもいつも伴奏者を引き受けてきた。厳しくも優しい先生に師事し、コツコツと基礎を積み上げ、ようやく基礎後半に進み始める、という頃であった。その流れでピアノの道に進むことも一つの選択肢ではないか、という話が本人やピアノの先生も交えて出始めていたのだ。

となると音大進学を視野に入れるわけだが、そのためには小学校卒業までにある程度の教本を終えなくてはならない。ピアノの先生から提案された道だったが、本人もピアノが好きだし、前向きに検討したいと思えた。その場合、内部進学に照準を絞って、ピアノのレッスンを続けていくのが現実的な案だった。

そもそも、「受験に左右されずに好きなことを伸ばせる」のは附属小のメリットだとも思うし、これが我が家がかつて小受をした理由のひとつでもあった。とはいえ、その場所がうっすらと合わないと感じている場所でもいいのだろうか。先に述べたように学力低下も著しい状況で先を絞って、本当に娘のためになるのだろうか。だけど、このペースで通塾するなら到底ピアノの教本は進まない、それどころか練習時間さえろくに確保できないままではないか。ピアノも塾も、どちらも変わらないペースで取り組むには、絶対的に時間も体力も足りなかったのだ。

入塾したばかりだというのに熟慮が足りない私のせいで、がんばり屋さんの娘を中途半端な状況に追い込んでしまった、そう思った。


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