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きゅーのつれづれ その2

ブーコ:

ピギーッ‼
暗闇のなかに変な鳴き声が響いた。ぴぎー?
できないのに振り向こうとして思い出した。カオリがぼくをしまい込むとき、ブタの貯金箱も足元にいたっけ。あいつか。
ブフー。
今度は鼻を鳴らしてる。
家にいた頃は機嫌のいいやつだったんだけど。引っ越しを決めてからカオリはお金がいるようになって、貯金箱に貯めてたお金をほとんど抜いちゃって、それからずいぶん怒りんぼになった。
「いったいいつまでこんなところに閉じ込めておく気よブフー!」
同感だったけど、相手にはしたくなかったからぼくは黙っていた。。
「あたくしをないがしろにして‼ あたくしの財産はいまや、アイスひとつ買うのがやっとなのよ! 貯金箱の名折れだわピギー‼」
興奮のあまり震えたのか、おなかの中の小銭がじゃらじゃらと音をたてた。
「ブギャッ⁉」
少し静かにしてくれないかなあ。
「おなかの内側がちょっぴり欠けてしまったわ‼」
じっとしていないからだよ。瀬戸物の体なのに。
すると上のほうで(つまり足の方角から)ガサゴソ動く気配がして、ぱっと光が射し込んだ。
「きゅーちゃん、ここにいたの。探してたんだから」
カオリはそう言って、やっとぼくを逆さ吊りから解放してくれた。カオリがぼくをここに詰め込んだんだよね。そう指摘したけどカオリには聞こえてない。
「あー、ブーコもここにいた」
ブタはその呼び名が好きじゃなくて、軽蔑の目でカオリを見ながら、それでも拾い上げられてほっとしてるみたいだ。
大きな窓からさんさんと陽が降りそそいで、部屋の惨状を照らしていた。開いたダンボール箱と開いてないダンボール箱の隙間には、本や服が散らばっていて足の踏み場もない。窓の下にはまっさらの白い棚がそこだけ空っぽのまま置かれていて、カオリはぼくをその上に載せた。
「うん、やっぱりきゅーちゃんには白い家具が似合うよ」
うん、ぼくもそう思うよ。
えへんと首を伸ばすと、まだダンボール箱の上にいるブーコが鼻で笑った。
ブフー。

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