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本番を客席から楽しめるのはお客様だけ。

「幕間ダイアログ」にご来場いただいた皆様。応援くださった皆様。ありがとうございました。
制作・宣伝美術を担当した佐光です。

今回の公演は、todokeru,のホームである徳島県、板野郡北島町にある「北島町図書館・創世ホール」という、todokeru,史上最大規模のホールでの公演となりました。
330席です。普段は20〜25席の会場で公演をしている劇団が、330席のホールで、2回公演。どうなることやら、と本当にヒヤヒヤしましたが、おかげさまで過去最大の動員数を記録することができました。

そもそもなぜホール公演を行う必要があったのか、それは実際に公演をご覧いただいた方ならお分かりになるかと思います。最後の映像演出は、映画館をイメージしていました。お客様方も、プロジェクタースクリーンを観ることで自身が映画館に居るように…感じられたのではないかなと思います。

さて「幕間ダイアログ」は広報に苦労しました。いっそ、できていなかった、といってもよいかもしれません。
今回の作品は映画に関わる固有名詞が多数出てくるため、台本の初稿(しかも前半部分)を初めて読んだ時は面食らいました。私は映画好きを自称できるほど映画を観ません。監督名なんぞほぼ知りません。そのため、見慣れない名詞を咀嚼するのに必死になってしまい疲労感と不安感を得たことを思い出します。しかし、しかしです。あらためて全編通して読んだとき、これは面白いぞと。いや、これおもしろいぞと。浮き立つような気持ちになりました。
この「幕間ダイアログ」は、作品をライトに楽しめる、言い換えれば、知らない単語があっても聞き流せる気楽さのある人にこそ作品の真意が伝わりやすい構成になっているようにも思えました。そして、映画(洋画)好きな人は彼女らの会話の意味がわかってなお面白い(のでしょう。私は半数以上わかりません)。
制作のすべき仕事、というか私自身のしたい仕事というのは「大木さんの作品のよさ」を多くの人に伝える、ということ。そのため、映画ファン「ではない」人にこの作品をうまく届けたいと思っていたのですが、これに本当に悩みました。百聞は一見にしかずと申しますが、客席に座っていただかないと観劇していただけない。この、客席に誘致するためのツールである「チラシ」と「キャッチコピー、説明文」。結局どのようにするのが正解だったのかわからず、不完全燃焼です。

しかし、その分劇団員の皆が自主的に動いてくれました。行きつけのお店にチラシを持って行ってくれたり、配布先リストを(自主的に!)作成して、それぞれ分担して持って行ったり。好意的に活動を受け取ってくださる方も多く、当日パンフレットのTHANKS欄、ここに掲載されていないお店もたくさんいらっしゃって、この経験とご恩はtodokeru,とメンバーにとって、かけがえのない資産になったと感じています。

また、今回当初はWEB予約のみで進めていくつもりでしたが、劇団員からの要望があり手売りチケットも途中から用意しました。決め手は、当時相談していた友人による「チケットは役者の武器になる」という一言でもありました(ありがとうね、Hくん)。
映画のチケットをイメージして作成することにしたため、よく演劇のチケットで目にする観劇回のチェック欄を設けず、用紙も薄くしました。席数が多い会場だからこそ行えたチャレンジだと思っており、これは成功したように思っています。

学生500円企画については、採算を度外視して企画しました。友達と誘いあって同じものを観る、という経験。映画ではよくあるかとおもいます。演劇もその機会の一つとして提供できたらなあという思いで企画しました。一般価格2000円もだいぶギリギリの予算ではあるのですが、価格を理由に観劇を控えるということにならないよう、ギリギリのなかでみんな費用をおさえるべく頑張りました。

そんななか贅沢にも感じられた当日パンフレット。先日のブログでも本人が触れていましたが、ほわくんが企画から進めてくれて予想以上のものになりました(映画のパンフレットのような、読み応えのあるものにしてほしい、というお願いであとは丸投げ状態だったのですが感激です!)。
ホール公演ということもあり、古民家やカフェ、小劇場のように「会場自体」をその公演の雰囲気に染めることは難しいと思います。総合美術のイメージは映画をモチーフとした舞台づくりになっていたので、なるべくその雰囲気活かせるように、せめて手元に残るツールで映画館に来た時のような感覚になってもらえたらいいなあと。そのように感じていただけたでしょうか……

ふみちゃんが作ってくれた受付とともに

また、今回アンケートには「すきな映画はなんですか」という項目を入れました。単なる興味というのはもちろん、能動的なアクションを得るための仕掛けとして設置したのですが、いただいたご意見との相関性が見えてきて興味深かったです。
アンケートを拝読した限りでは、作品については概ね期待通りの反応をいただけたように思います。久米ちゃんがズバッと書いてくれていましたが、このナイーブな作品はともすれば作家のノスタルジーと取られかねない危険性を孕んでいました(大木さんが映画好き、ということもあって、それはもう濃厚にそういう匂いがしました)。頼むから「けい◯ん!」とか「ゆる◯ャン」とか「SHIR◯BAKO」のような…と具体名を出すのは良くないですね。なんというか、自分の好きなものを若い女性に語らせてる作品と受け取られませんようにと願っていましたので、感想を拝読ほっと胸を撫で下ろしました。

ちょっと話は逸れますが、、ここのところ、もやもやと悩んでいたことがあります。(私は演劇についての知識はほぼありませんので、界隈ではすでに語られ尽くしたことのようにも思うのですが……。)
演劇作品の観劇スタイルについて。評価する目で観るのか、主体的に「楽しもう」と作品の中に飛び込むのか。これは経験を重ねるほど前者に寄りがちだと思っています。演劇に限らず、です。(私などはケチな部分があるので「せっかくお金を払ったのだから楽しまないと損だよね〜」なんて思ってしまうのですが、どうしても批評的な視点が顔を出してくるんですよね。とはいえ高い作品のほうが批判が発生しづらくなる、という心理的バイアスには抗っていきたいところ。)
そしてその演劇作品の「評価」について。
評価って既に舞台に上がる前に始まっている、そういう事実があります。作品を読まれる前に評価され、観劇の土壌にも上がらない。最初のほうに書いた悩みですね。
いろんな要素があります。劇団や作家・演出家、役者の知名度や好き嫌いはもちろんあるでしょう。ビジュアルやティザーイメージ。キャッチコピー、あらすじ。口コミ。劇場の規模、価格。全くの初見の場合は、それら「舞台以外の部分」で観劇するかどうかを判断・評価しないといけません。
つい最近、まさしくこの制作が担う部分で切り捨てられる経験をしました。観劇される以前の段階、脚本も抜きで作品の評価をされる場がありました。そこではどれだけアカデミックに作品を文章化できるか、社会的意義やメッセージを持たせるかで作品が評価されるのだなあと痛感し、自身の力不足に申し訳なさを強く感じました。
と同時に、そういった傾向にはやはり賛同できないなあと自身のスタンスも再確認できました。
だって、だって、演劇ってさ、小説とかエッセイではできないこと、「舞台に上げて演者に演じてもらうこと」を表現手法として取っているものなのに、なんで舞台の外、文字列で評価されるの?っておもいません?矛盾してない?言い方変えるけどさ、文字で語るのはうまくいかないから舞台で表現してるんだけど?って思わない?いや皆が皆そうなのかどうかは知らないけど。
文学作品も演劇作品もその時代と合わせて語られることが多いですし、なんだか高尚でなければいけない、社会的なメッセージを含んでいなければならないような雰囲気がありません?ない?ないならいいんです。なんていうか最近ね、もっとシンプルに「これすきだなあ」「あんますきじゃないなあ」とそういう感じに味わいたいなあ、なんて思うようになりました。あ、これ、疲れてるだけかも。
……少なくとも「作品の良さを表現できなかった」なんて反省をしないように今後精進したいと思います。

制作以外で関わったことにもせっかくなので触れておきます。

・図書館シーンのアナウンス。
大木さんに、尺がちょうどいい、と褒めてもらえました。こうやって少しでも舞台に関わる機会をいただけるのが嬉しいところです。todokeru,入ってよかった。

・エンディングでプロジェクションする映像の編集。

セピア→白黒に色も変化します

鵺さんが撮影してくださった動画に加工を施しました。現場には立ち会えませんでしたが、カラフルで華やかなドレスを着ていて(すべて某k氏の私物という噂)、これを単色加工するのはなんだかもったいないようにも思ったのですが、要望に沿っていい仕上がりになったと思います!(自画自賛)
本番でプロジェクターが止まりやしないかとヒヤヒヤヒヤヒヤしていました。

・ゲネ写真の撮影

この腰と膝の入り方天才的

ゲネではじめて通して観たのですが、途中から観入ってしまって如実に枚数が減るという失態もありつつ。舞台上での真っ黒の服とか真っ白の服ってほんと難しいよね。とはいえ皆がいろいろブログとか諸々に貼りつけてくれて嬉しい限り。舞台写真もっと上手になりたいな。撮りに行くのでいつでも呼んでください。

別れと出会いの季節。4月からはまた、次の公演に向けて動き出します。私も何かできることがあるのか、ないのか、どんな公演になるのやら。みなさま続報をお楽しみに!

それではまたね。

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